N私が見た映画

ホ−ム>>私が見た映画更新日 2016/1/9


                         =私が見た映画=

<映画は総合芸術!>
 19世紀までオペラが最高の総合芸術であったように、20世紀に入ってからは映画が総合芸術になった。映画ほど、楽しく、勉強にもなるものはない。
 久しぶりに、その映画を見る気にさせてくれる本に出会った。「映画で入門 カルチュラル スタディーズ」(本橋哲也)である。この本で紹介している映画を見て行こうと思う。
 本は18のテーマにそって主作品を1本紹介し、他に、同じテーマの作品、同じ監督の作品を紹介している。(赤字でp**と、この本で紹介されているページを示します。)

タイトル舞台監督俳優制作年
ドイツ零年ドイツロッセリーニ1948年

「無防備都市」「戦火のかなた」は何回か見ていて、ロッセリーニの戦争3部作は全部見た気になっていたが、最後の「ドイツ零年」はまだだったことに気が付いた。
「ドイツ零年」が戦後を描いた映画であることは知っていたが、これはすごい・・・・・

戦後70年の大晦日に購入したのは記念になる。(実際に見たのは、2016年に入ってだが)
第2次大戦後に、イタリアでも日本でも、優れた映画がつくられたのは背景が共通しているからだろうが、日本映画でこれほどリアルに敗戦後を描いた映画はあったのだろうか?あまり見た記憶がない。
想い浮かんでくるのが、小津安二郎監督の映画だが、小津監督の場合は、まったく戦争を描いていない(と思うが)のがすごい。小津監督の戦前と戦後の映画を見比べると、その淡々とした画面はまったく変わらず、戦争なんてまるでなかったかのように感じる。つまり、小津監督は戦争を撮らないことによって、抵抗したのだと感じる。

対して、ロッセリーニは、戦争でおかしくなった大人の世界を冷酷・残酷に描いて、戦争を語る。歴史の証言者として映画。

タイトル舞台監督俳優制作年
レッド・ダスト南アフリカトム・ホッパーヒラリー・スワンク2007年

南アフリカでアパルトヘイト後に実施された、民族和解委員会をテーマにした映画。
「憎しみ」「報復」ではなく「赦し」「和解」を掲げて、新しい国を作り出そうとした取り組みを、忠実に再現しようとした映画に、スワンクが主演しているので惹かれて見た。

まったく同じ題材、テーマの「インマイカントリー」(2004年)もある。こちらはジュリエット・ピノシェが主演で、実際に和解委員会をラジオで報道し続けた(識字率が高くない南アフリカでは、7か国語以上の同時通訳をつけて実況中継することが不可欠で、大変な仕事だった)ジャーナリストのルポ「カウントリーオブマイスカル」を映画化したもの。 白人女性と黒人男性を主人公にして、本当に似たような映画なのだが、「レッド・ダスト」の方を薦めたい。

移動トラックで地方を回って聴聞会が開かれていく様子を描くのは共通しているのだが、弁護士をしているスワンクが出身地域の聴聞会に戻ってきて、現在は地域幹部になっている元活動家の過去が暴かれてゆく過程を描いていて、真実味があると感じたからだ。
和解委員会は「勝者の裁き」ではなく、勝利したマンデラのアフリカ民族会議(ANC)の「暴力」を同じように扱い、ANCが最後までその実施に抵抗したのが特徴だ。
加害者が真実を証言することを条件として特赦を与え、司法手続きにゆだねない形で、赦しと和解を追求しようとした、その取り組みは、苦渋の中で選択された壮大な実験だったと感じる。

タイトル舞台監督俳優制作年
息もできない韓国ヤン・イクチュンヤン・イクチュン/キム・コッピ2008年

呆然とするしかない、すごい映画。

韓国映画のパワーを感じさせる。タイトルは日本でつけた物らしいが、本当にそのとおり。
二つの点だけ、気づいたことを紹介する。

韓国TVドラマを見ている方は、是非、この映画を見てほしい。韓国TVドラマで、絶えず出てくるのは、財閥トップの一家とその豪勢な家での生活。この映画に出てくるのは、韓国の経済成長を支えた労働者たちが住む、「タルトンネ」(貧民街)。舞台の違いに過ぎないが、その世界の違いはすごい。
次は、やくざ映画について。この映画の主人公は、借金取立てをしているやくざであり、ボスの「社長」はダチである。従って、この映画はやくざを主人公とする映画に違いない。
そこで、日本のやくざ映画との違いに驚かされる。日本のやくざ映画といっても、一時代風靡したに過ぎないが、決まったパターンがあり、映画会社の製作路線に沿って作られたものである。この映画には、パターンも映画会社も糞もない。つまり、興行成績や、観衆に受けるか を気にすることなく、主演・監督のヤン・イクチュンが、家を売り払ってでも、作りたかった個人の映画なのだ。

これは、やくざ映画の違いを超えて、映画そのものの違いといえる。日本の俳優(特に最近の俳優)は、誰かが言っていたが、俳優ではなくその後ろで見守っている、マネージャー が見えてしまう。つまり、仕事を取ってもらって、カメラの前でポーズを取っているタレントが多くなっている感じがする。これに対して、韓国の俳優は、よく言われているように 人気があっても、演技ができる俳優が多い。
この映画のヤン・イクチュンもキム・コッピも見るのは初めてだが、惹きつける力を持っている。

タイトル舞台監督俳優制作年
アメリカンスナイパー米国・イラククリント・イーストウッドブラッドリー・クーパー他2014年

イラク戦争で英雄となった米海軍スナイパー(狙撃手)を描いた実話映画。

「ミリオンダラー・ベイビー」(p116)以降好きになっているイーストウッドだが、この映画はつまらないと思う。
イラク戦争を描く映画としてはローチの「ルート・アイリッシュ」のほうが優れていると思うので、見てほしい。

この映画はベトナム戦争を描いたキューブリック監督の「フルメタルジャケット」と共通点が多い。普通の市民を兵隊に改造する、過酷な新兵訓練。「フルメタルジャケット」では、リアルにしつこく描いて、最後は指導教官が殺されてしまう。これに比べれば、「アメリカンスナイパー」は平板で、葛藤がない。そして、戦闘シーンでは、スナイパーが両方に登場する。 「アメリカンスナイパー」では、スナイパーは米軍地上作戦を援護する頼もしい味方。はるか遠くから、望遠鏡つき銃で、敵をとらえ、無線で射撃許可を得てから正確にイラク人を殺していく。 「フルメタルジャケット」では、フエの戦闘で、米地上部隊がスナイパーに遭遇して、仲間を殺され、スナイパーを見つけ出して殺さない限り、どうしようもなくなる。やっとこのスナイパーを撃って、「獲物」を確認してみたら、息絶え絶えの女性「べトコン」だった。

もう一つ、こちらは映画ではなく、実際の映像。2007年、イラクで米軍のアパッチ・ヘリコプターのカメラが捕らえた、イギリスのロイター記者2名を殺害した映像。「ウイキリークス」のアサンジが暗号を解読してアップした。→映像
本当に映画「アメリカンスナイパー」の1シーンを見ているようである。

現在のハイテク化、無人化された戦争。そうした戦争と人間の関係を「アメリカンスナイパー」のタイトルから求めたのは、求めた方が無理だったのかもしれない。

タイトル舞台監督俳優制作年
輝く夜明けに向かって南アフリカフィリップ・ノイスデレク・ルーク他2006年

これは、オススメの映画だ。

アパルトヘイトを描いた映画は多い。しかしこれは、アパルトヘイトが終わった後の「和解」まで描いている。

これは映画として良いとは思わない。劇ではなく、記録映像としてぜひ見てほしい。
これは実在のANC武装組織のメンバー、パトリック・チャムーソの一生を描いている。
そして、ラストの場面で、本人が衝撃的に、実写で出てくる。
脚本を書いているのが、映画にも登場しているANC武装組織のリーダーと母を爆殺されたその娘(白人)である。
そして、DVDの「特典映像」ではすべての関係者が率直に語っている。

「憎しみと報復に対する赦しと和解」これは現代の一番大きな思想的対立であり、日本が一番世界の流れから孤立している点ではないか?

タイトル舞台監督俳優制作年
ルート・アイリッシュイギリス・イラクケン・ローチマーク・ウォーマック他2010年

「エリックを探して」の翌年にローチが作った映画。前作がこの上なく明るい映画だとしたら、これは、打って変わって、暗く、やりきれない映画だ。
舞台はイラク戦争で、テーマは、戦争請負いビジネス。
イラク戦争に加担したブレア政権下のイギリスで進行していた、厳しい人間崩壊の現実を抉り出している。

この監督の告発する力は衰えていないな。

タイトル舞台監督俳優制作年
プルーフ・オブ・マイ・ライフアメリカジョン・マッデングイネス・パルトロー/アンソニー・ホプキンス2006年

「恋におちたシェイクスペア」(p106)の監督・女優による8年後の作品。こちらは、アカデミー賞はとっていないが、見ごたえのある優れた作品。
数学者の親娘を主人公として、数学論文のプルーフ(証明)をタイトルとする珍しい作品。同じコンビによる劇を映画化したものらしいが、時間をオーバーラップさせながら、これは、じっくり見させる映画になっている。
日本でも、ほとんど同じ時期に数学の学者を扱った「博士の愛した数式」が映画化されているのは不思議な感じがする。
病に冒された数学者を描いていることも共通しているが、こちらの方が楽しめる。
何よりも、30代中頃の主演パルトローの一番良い作品だと思う。「エマ」「恋におちたシェイクスペア」は若々しくて魅力的だが、こちらのほうが彼女の演技を見せる内容になっている。youtubeでワンカットを見て、「ああこれは見たい」と思って、DVDを入手したが、期待通りだった。

そして、イギリス人監督のマッデンは、聞きなれない名前だが、もっとその作品を見てみたい気にさせる監督である。

タイトル舞台監督俳優制作年
わたしを離さないでイギリスマーク・ロマネクキャリー・マリガン2011年

臓器移植をするために作られたクローンのための学校を舞台にした映画。
というと、「なんというSFめいた話」と思うだろうが、極めて真面目で、リアルな映画です。

イシグロ・カズオ原作の小説を、著者が指揮して作った映画。ナチスに協力する英国貴族を背景に描いた「日の名残り」に続くイシグロ作品の映画化。
移植を目的に作られ、数回の移植後は使用済み道具として死んでいく「人間」たちの世界を描いて、「なんでこんなプロットにしないといけないのか」と思って見ていたら、最後には、これは普通の人間がいかに生きてゆくのかを問うていることに気がつく。

長崎で生まれたイシグロは注目すべき作家、人だと思う。
タイトル舞台監督俳優制作年
エリックを探してイギリスケン・ローチエリック・カントナ2009年

新しい映画を作った、と聞くと見ざるを得なくなるのが、ケン・ローチ監督。ここに、登場するのも3作目で最多だろう。

「社会派」の典型みたいに、「これでもか」とばかりにイギリスの労働者階級の厳しい現実を描いてきた監督。
その人が、初めて作った「ハッピーエンド」の映画。70歳を過ぎて、こんな風に作風を変えるのは、本当にすごいパワーだと、圧倒される。最近見たものでは、ワイダの「カチンの森」よりはるかにすごい、と思った。70過ぎて、こんなに、前向きの、明るい映画を作れることに、脱帽するしかない。
ここには、「仕上げ」や「完成」を拒否して、前だけを見続ける若さがある。ローチはどこからこのエネルギーを得てきたのか、知りたくなる。

タイトル舞台監督俳優制作年
キャタピラ日本若松孝二寺島しのぶ2010年

戦争を描いた日本の映画で、期待通り、良かった。
外国で賞を取っておきながら、沖縄戦の6月から沖縄で上映開始して、東京・大阪等の上映を盆明けからにずらすのは、やはり、普通の商業映画では出来ないことだと感心する。

何が良かったかというと、戦争の「被害」と「加害」をちゃんと描いている、と感じた。それも、夫婦の中で「被害」と「加害」が決して交差せず、理解もされない姿に、日本人全体の状況を象徴させている、と感じた。

若松監督のような「パワー」を持続させている人がいることに、感動する。

タイトル舞台監督俳優制作年
善き人のためのソナタドイツドナースマルク2006年

これは旧東ドイツを正面から描いた良い映画だ。
「良い映画」とは「体験」させてくれる映画だ。筋書きや、登場人物が予想を超えた展開をし始めると「エ!」「オ!」という「体験」を味わうことになる。
秘密警察「シュタージ」の典型的人間が、そこからはみ出した展開をしだすと、「人間」が動き出す。東ドイツの社会と人間を描いた「グッドバイ レーニン」はパロディなのはわかるが、描き方が平べったい。この映画は明らかに、「グッドバイ レーニン」を乗り越えようとして、よりリアルに社会と人間の生き方を描こうとしている。
この映画はもう一つ「体験」をさせてくれる。統一後、「シュタージ」の被害者が自分のファイルを見る映像。ニュースで見たこの映像が、映画の最後の方に出てくる。「あ!そうだったのか!」現実と創作(映画)のこれほどの出会いを「体験」させてくれる映画はそうはない。

考えて見れば、ペレストロイカやその後のロシヤを描いた映画をみていないな。そのうち、北朝鮮を描いた映画も出てくるようになるだろうという予感と期待?
タイトル舞台監督俳優制作年
ペパーミント・キャンディー韓国イ・チャンドン1999年

「光州事件」は、長女が生まれた時の出来事でよく覚えている。
韓国でその映画化が行なわれるようになっている。「光州5.18」は、真正面から描いた映画で、ドラマチックだが、何でこんな事件が発生したのか、もうひとつよく分からない感じが残ってしまう。

「ペパーミント・キャンディー」は、事件の経過を描いたり、再現しようとはしないで、たまたま兵士として事件に出会ってしまった男のその後を描いている。
映画としての特徴は、事件から20年後から始まって、だんだん時期をさかのぼっていっていく、珍しい手法を採用していることだ。
現在の韓国に事件はどのような爪痕を残しているのか、想いをめぐらしたくなるような余韻がある映画だ。
タイトル舞台監督俳優制作年
パッチギ!LOVE&PEACE日本井筒和幸中村ゆり2007年

 パッチギ!2は1よりは楽しめた。舞台は70年代の東京に変わっている。

最初の、電車での乱闘シーンに「またか!」と感じたり、韓国での回想シーンのはさみ方など、1と同様、なんで?と疑問を感じるところはあるが、いつの間にか、引き込まれてしまう。

芸能界に入っていく在日女性の抱える世界とその親たちが経験した、韓国済州島の四三事件とその後をオーバーラップして描く、のがテーマになっている。

この1年で2回韓国に行ったり、この映画を製作している李鳳宇に関心を持ったり、「JSA」を3回見たり、と韓国-日本の関係に入り込んでいっている。  
タイトル舞台監督俳優制作年
トンマッコルへようこそ韓国パク・クァンヒョン2005年

JSAの後にできた、南北融和に向けた同じようなスタイルの映画。
しかし、こちらのほうがさらに、非現実的で、おとぎ話の要素が強い。朝鮮戦争の真っ最中に、南北両軍と米軍の兵士が、昔ながらの生活を送っている山村で一緒に過ごす話だ。

プロットは「七人の侍」をそっくり借りてきていて、ちょっとなあ・・・という感じだが、南北融和に向かう韓国の動きは感じ取れる。ソウル大の先生に勧められて見たが、「JSA」の方が重みを感じる。  
タイトル舞台監督俳優制作年
JSA(p213韓国パク・チャヌクソン・ガンホ/イ・ヨンエ2000年

これは、すごい映画だと思う。3回ぐらい見ないと、全部わかった気になれない。わかりにくいのは、「羅生門」を真似て、同じ事件に対する登場人物の異なる主張を映像で見せる事もある。
しかし、何より、見る側の思い込みを裏切るので、見直さざるを得ないのである。 1年前に作られた「シュリ」のような、従来型の南北対立を描いた映画だと思わせておいて、まったく違うのに気がつかざるを得ない。「シュリ」は進行する南北和解を背景には出しながら、非人間的な南北対立と暴力をステレオタイプに描いている。
「JSA」は南北の男の兵士の間の友情を描いている。「シュリ」よりリアルに板門店で対峙する兵士を登場させながら、実に奇妙な友情を展開してみせる。特に、「北」の兵士の描き方に、全く政治性、一面性を感じさせない。
DVDについている監督・俳優の感想を見ると、この映画は楽しく、面白いものだという印象がよく伝わってくる。それが、韓国の人の受け止め方だと思うし、韓国でこの映画が最高の興行収入を上げた理由なのだろう。とにかく、新しい時代を切りひらこうとした映画だと思う。
イ・ヨンエは、映画で挿入された、話の進行役なのだが、あまり印象に残らない。同じ監督と後に作る「親切なクムジャさん」(p219)(2005年)は彼女の多面性を見せつける映画だ。
 
タイトル舞台監督俳優制作年
アンボンで何が裁かれたかインドネシアスティーブン・ウォレス1990年

「鬼が来た」(チアン・ウェン 2000年 p260)は中国で捕まった一人の日本兵を描いているが、この映画は、オーストラリア軍に捕まった、多くの日本兵を描いている。
いわゆるBC級戦犯を描いた、オーストラリア映画。インドネシアのアンボン島の日本軍捕虜収容所で実際に起きた、日本軍によるオーストラリア軍捕虜処刑・虐待事件を取上げている。捕虜生き残りの人の手記を元に、作成されている。

戦犯裁判で事実が明らかになっていく過程を描く、重い映画である。責任者をかばう米軍と処刑されるキリスト教徒の下士官が対比して描かれる。オーストラリアの映画だが、いろんな、やりきれない面をちゃんと描いている。見終わって、残るものがある映画である。

東条らの東京裁判を描いた、日本映画「運命の瞬間(Pride)」の単純な描き方とは比較にならない(政治的立場を批判しているのではない)。
 
   
タイトル舞台監督俳優制作年
麦の穂をゆらす風アイルランドケン・ローチキリアン・マーフィ、 オーラ・フィッツジェラルド2006年

1920年のアイルランド内戦を描いた、ケン・ローチの作品。
ローチの作品は可能な限り見て、いつも良いと思ってきたが、この映画は見ても、?という印象。アイルランド内戦はイヤというほど映画化されてきたが、それに何を付けくわえたのだろう。しかも、北アイルランドの和平がやっと実現しそうなこの時期に!!

そこで、この映画の感想をネットで調べた。
兄弟が内戦で対立し、最後は兄に処刑される、内戦の厳しさよりも、英国軍の残虐さをリアルに描いた事が論争になっている。イギリスではほとんど公開されなかったようである。
結局、イギリス人ローチが、和平目前に、イギリス植民地主義の残虐さを描いた点に、社会性と政治性があるようだ。「裏切り者」「よくぞやってくれた」とイギリス、アイルランド双方の国民が映画の感想をぶつけあう様は、アイルランド問題の生々しさを教えてくれる。163のコメント

しかし、映画として面白いとは思わない。
 
タイトル舞台監督俳優制作年
ウンタマギルー(p276沖縄高嶺剛小林薫 戸川純  1989年

1969年の佐藤首相の訪米によって決まった、沖縄返還と言う時代を背景にして、「沖縄独立」を描いたファンタジー。
せりふは沖縄語で、日本語字幕と変わった映画ではあるが、「神々の深き欲望」のような迫力は感じられず、「沖縄独立の可能性」がリアルに描かれているとは思えない。
むしろ、冒頭から本名のまま出てくる、沖縄音楽の照屋林助の音楽や飄々とした姿に目がいってしまう映画だ。
 
タイトル舞台監督俳優制作年
アフガン零年(p67アフガニスタンバルマク  2003年

タリバン支配のアフガニスタンを描いた映画。生き延びるために、男となって働いて、家を支える少女を主人公にした映画。素人のストリートチルドレンが演じているところは「インディスワールド」と同じ。
だが、監督がアフガニスタン人で、自分たちの社会を支配したタリバンを庶民の目から厳しく再現しているのが違う。視点の「政治性」は感じるが、「タリバン支配」の内実を当事者の立場から見せてくれるのが、映画のすごさ!!
 
タイトル舞台監督俳優制作年
ククーシュカフィンランドロゴシュキン  2002年

フィンランドのラップランドで第二次大戦中に繰り広げられた、人の出会いを描くロシア映画。
テーマの一つは<先住民>サーミ族。サーミ族の女性がロシア、フィンランドの兵士を助け、冬までの間かくまう、変わった話し。

もう一つのテーマは<言語>。3人は話す原語が全く違い、意志疎通が出来ない。全く通じない3言語での会話を、最後まで続ける。こんな映画は、どう考えても、見た覚えはない。それだけでも、見てみる値打ちのある映画だ。全く通ぜず、すれ違う会話にもかかわらず、進行していく3人の関係に、不思議な感じがしてくる。
 
タイトル舞台監督俳優制作年
悲情城市p228台湾候孝賢梁朝偉(トニー・レオン)  1989年

台湾の戦後の4年間を描く有名な作品。以前見たが、台湾の歴史が少し分かってきたので、見直そうと思った。そしたら、勘違いであったことに気づき、初めて見る作品だった。

国民党が台湾の人々を弾圧した2・28事件を取りあげた映画、国民党政権の「民主化」で初めて可能になった歴史の再発掘、等映画外の知識が、どうしても先行してしまう。
テーマがあまりにも生々しいので、描写は抑えて、淡々とならざるを得ない、と言う気もしてくる。
しかし、固定カメラからの、長いカットの連続には、どうもついていけない。この監督はもう少し他の作品を見てみないと、よく分からない。
 
タイトル舞台監督俳優制作年
やさしくキスをイギリスケン・ローチエヴァ・バーシッスル  2004年

イギリス人の監督で一番好きで、新しい作品は見ないわけにはいかないのがケン・ローチ。2001年の「ナビゲーター」(p184)はまだ見ていないが、その前の「シクスティーン」も良かった。

ずっと、下積みの労働者、庶民をドキュメンタリータッチで描いてきたが、70歳を過ぎても、労働党を批判して、「リスペクト」の一活動家、指導者として活動していると聞いて、ますます関心が強まった。

この最新映画は、「ラブストーリー」とうたっているが、主題は、パキスタン系移民男と白人女性の障害が多い恋。純愛をテーマに、イギリスにおけるムスリムのホットな問題に、やはり、ローチはつっこんでいくのだ。
 ただ、次から次へと、宗教・文化の違いを突きつけていきながら、最後は2人の恋を貫いて、ハッピーエンドで終わり、これはやっぱり「ラブストーリー」なのだ、と気がつく。
 
タイトル舞台監督俳優制作年
ヴェラ・ドレイク(p82イギリスマイク・リーイメルダ・スタウントン  2004年

マイク・リー監督の作品は、1996年の「秘密と嘘」が黒人の姉妹がいるのを知って驚く白人を描くように、少し変わった、驚くようなテーマをとりあげる。この作品は、「人助け」で堕胎をして罰せられる善良な女性を取りあげる。1950年のイギリスの現実だったらしい。

最近のイギリスの映画は、救いようもない厳しい現実を淡々と描く、つき離したような映画が多いと思う。ハリウッド映画は、どんなに厳しい問題を取りあげても、やはり、娯楽に仕立て上げようとする意識を感じる。同じアングロアクソンの国とはいえ、映画に対する考え方が相当違ってきていると感じざるを得ない。

確かに、多くのことを教えてくれる映画だ。戦後間もないイギリスのつましい生活、妊娠中絶をめぐる階級差、女性と労働、何よりも、庶民に対する監督の暖かなまなざし。しかし、母親を刑務所に奪われた一家の、沈黙の食卓を写すラストシーンの唐突さとやりきれなさ・・・・。
 
タイトル舞台監督俳優制作年
イン・ディス・ワールドp232パキスタン→イギリスマイケル・ワインターボトムジャマール・ウディン・トラビ  2002年

アフガン難民が2人で、パキスタンの難民キャンプからイギリス密入国を目指すロードムービー。
ドキュメンタリータッチで、陸路、ロンドンを目指す旅を追っていく。密入国ルートを頼って旅は始まるが、段々、危険は増し、ルートは頼りなくなる。

映画としては、ストーリー性もあまりなく、単純。英語ができるという理由で選ばれた、ジャマール(本名で登場する難民の少年)が、映画終了後本当にロンドンで難民申請をしたというリアリティがある。
僕もここ4年連続してロンドンを訪れたが、もちろん、何れも飛行機。旅の長さ、過酷さが全く違う。目指すロンドンの「ありがたみ」を感じてしまう。それと、有効なパスポートを持っている「ありがたさ」も。 

関空から国外退去を命じられ、2ヶ国を経てようやくイギリスにたどり着き、自由を得た、アフリカ人2人と昨年、ロンドンで、会う予定にしていた。1人が病気になって会えなかったが、彼らの長い旅と日本入国拒否で体験した苦しみを思い出した。
 
タイトル舞台監督俳優制作年
多桑台湾呉 念真  1994年

 「悲情城市」(p228)の候孝賢の脚本家の初作品。「父さん」と読む。日本時代に育った、父の生き様を息子の眼で追った作品。
 いきなり、日本語のラジオ放送が出てきて、テーマを予感させるが、前半は展開がともかく分からない。原因は、ロングショットの多用で、顔のアップがないので、登場人物が分からないから。想像で筋を追っていくと、全く裏切られ、分からなくなってしまう。

 その代わり、後半は、筋もわかり、集中度は一気に高まる。鉱山で働き、肺を病んで死んで行く、わがままな男の話しだが、台湾の戦後の屈折した歴史が織り込まれている。

 どこかにも書いてあったが、この映画は「言葉」が重いテーマとなっている。良くでてくる日本語ラジオ放送。「カネがない」だけは息子も日本語を知っていると話す「父」。孫の話す北京語が分からないと突き放す「父」。  もう治療の可能性はないと話す医者の北京語ぐらいは分かると言う「父」。

 命を懸けても行きたかった父の代わりに、父の遺骨を抱いて、日本旅行に発つ息子。日本の街で良く耳にするようになった観光客の中国語だが、こんな「物語り」に思い至るだろうか?
 
 
タイトル舞台監督俳優制作年
パッチギ!p159日本井筒和幸塩谷 瞬  沢尻 エリカ2004年

 1968年の京都の在日の若者を描いた映画。評判は良くて、期待して見たが、感想は・・・ダメ!
自分が体験した時代・場所だから、かえって面白くないのか、良くは分からない。最初のコンサートの場面から始まって、一つもリアリティが感じられないままに終わってしまった。

 何でつまらないのか、考えようとしたが、見てから大分経ったが、分からない。説明はつく感じもするが、つまらない理由をくどくど述べても、あまり面白くはないので、止めておく。
タイトル舞台監督俳優制作年
ミリオンダラー・ベイビーp116アメリカクリント・イーストウッドクリント・イーストウッド/ヒラリー・スワング2004年

 色んな面を持った、渋い、抑えた映画だ。「ララミー牧場」以来50年もこの世界で生き抜いているクリント・イーストウッドの姿に思わず惹きつけられる。
 しかし、見て何より意外な発見は、この映画の一つの、そして大きなテーマは「アイルランド」だと言うことだ。女主人公の名前は「フィッツジェラルド」。イーストウッド演じる男主人公はケルト語の勉強に余念がない。そう、この映画は、アイルランド系アメリカ人の男女の生き様を描いた映画なのだ。
 そして「アイルランド」は単なる背景ではなく、メーンテーマなのだ。フィッツジェラルドはヨーロッパへ渡って、ボクシング試合で勝ち抜き、ビッグになっていくが、そのきっかけは、イーストウッドがフィッツジェラルドに与える緑色の試合用ガウン。その背にはケルト語で「モ クシュラ」。観客は名前「フィッツジェラルド」ではなく「モ クシュラ」を連呼する。アイルランド人はボクシング好きで、「アイルランド人はどこにもいた」のだ。
 「あなたが付けてくれたヘンな名前で観客は私を呼んでくれた」その意味の「翻訳」をイーストウッドに頼むが、彼は明かさない。最後の場面で、イーストウッドが明かすのは「モ クシュラ」の意味。それを知って、フィッツジェラルドは涙を流した、と私は見た。

タイトル舞台監督俳優制作年
ジャマイカ 楽園の真実p242ジャマイカステファニー・ブラック2001年

 2005年東京平和映画祭で上映されたこの映画は、題名の通り、レゲエを生んだ国の現状を告発するドキュメンタリー。ここ数年、レゲエ、マーリーを追ってきたので、見ないわけには行かなかった。
 原題「生と負債」とあるように、ジャマイカを訪れるアメリカを中心にした休暇ツアーの観光客の姿と対比させて、IMFが押し進めるジャマイカ経済の収奪を、当事者のインタビューを使って、展開する。この映画を見て、レゲエの歌詞が何を言おうとしているのか分かった、と言う若い人たちのネットでの感想が印象に残る。それにしても、グローバライゼーションがもたらす、人々の無力感、そして、焚き火を囲んで聖書を読むラスタファリの人々の姿と、IMF幹部の語り口の落差には、ため息をつくしかない。
 唯一の「救い」は、企業言いなりのアメリカと旧宗主国イギリスを初めとするヨーロッパの「植民地支配」の責任を踏まえた政策の違い、対立がかいま見えること。

ホ−ム>>私が見た映画

更新日2016/1/9