ホ−ム>>イチ押しの人・話題>>拡大EU 拡大EU 更新日 2008/6/29



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   第1回  2004年5月31日


  今月1日、EUが25カ国に拡大して、拡大EUがスタ−トした。

  この拡大EUを追うコラムを始めようと思う。どこまで続けられるかはわからないが、毎週1回書いていこうと思う。

  なぜ、ヨーロッパなのか?この答は簡単、明白で、「ヨーロッパは新しい」からだ。昨年のイラク戦争の際に「古いヨーロッパ」という言葉が新聞紙面を飾ったが、すでに「新しいヨーロッパ、古いアメリカ」のタイトルの本も出ている。こちらの方が正しいと思う。

  だから、現在進行形で進む、この新しい試みを追ってみたい。 国境を取っ払うこの試みは、本当に新たな歴史を作っているのだろうか?統一の旗の下、どんなことが進行しているのだろうか?対米追随、いや、ブッシュ追随の小泉日本に不安と憂いを感じざるを得ない中で、ヨ−ロッパの状況を把握しておくことは、マイナスにはならないだろう。

  このコラムを始めるきっかけはいくつかあるが、その一つは1冊の本である。
  木立玲子著「気ままにフロム ヨーロッパ」(ラティーナ)は最近のヨーロッパの息づかいを伝えてくれるすばらしい本だ。木立さんはフランス在住で音楽を専門としているが、広く豊かで、かつ鋭い視点を持って物事を視ていることがわかる。

  木立さんはパリに住み、インタヴューを交えて、現場からの発信を行っている。さて、それでは、日本にいながら、EUの動きを追えないだろうか?と考えた。
  できるだろう。インタ−ネットと衛星テレビのヨーロッパ各国のニュースで情報を追えば、日本から見た拡大EUを追っていけるだろう。



   第2回  6月5日


  6月6日は、連合軍(イギリス、カナダ、アメリカ)のノルマンンディ上陸の60周年を迎える。各国元首に元軍人を招いて、盛大な式典が準備されている。

  60年の節目の今年の目玉は二つ。1つは、イラク開戦以来「不仲」のアメリカと「古い欧州」の和解。そして、もう一つは、ドイツのシュレーダー首相の初めての式典への出席。

  ブッシュは多くのアメリカ人の犠牲によって実現した「ナチスからの解放」の実績を使ってヨーロッパとの和解を実現しようとしている。和解は国連での新たなイラク問題の決議として実を結ぶようだ。
  
  このコラムとしては、2番目の、ドイツ首相の初めての出席の方が注目される。10年前の50周年の時はコ−ル首相が招かれながら、断ったそうで、今回やっと実現する。
  フランスでは、8割以上の国民がドイツを最大の友ととらえ、今回のドイツ首相の訪問にも反対はないと報じている。 これに対して、ドイツではシュレ−ダー出席に対して多くの意見があるようだ。
  
  ドイツ国内の詳しい事情は調べないとわからないが、EUの基礎となっている仏独関係を築き上げていく作業の大変さに改めて気づかされる。そして、ドイツよりもむしろ、フランスの傷跡の深さに目がいった。
  ノルマンンディ上陸が成功し、アメリカ、カナダ軍が初めてヨーロッパに登場してナチスからの解放が進む。しかし、その前に、ナチスのフランス占領は4年続き、フランス国内の政治状況は複雑な状態になる。そして、ドイツ軍人とフランス女性の間に20万人の子が産まれる。
 ナチスからの解放後は、これらの女性が公衆の場で丸坊主にされる。この様子をフランスのテレビが取り上げていた。20万の「ナチスの子」らが過ごした戦後の厳しさとともに。

 欧州統一でこうした、フランス社会が抱えた傷跡がどのようにいやされていくのだろうか?
 他方で、ノルマンンディ上陸の翌月、フランスの解放を目前にして、偵察飛行に出て死んでいった「星の王子さま」のサンテジュクペリのことも想い出さずにはいられない。   


   第3回  6月12日


  ノルマンディー上陸60周年をきっかけとした、アメリカと欧州の「和解」からサミット、イラクに対する国連決議と、めまぐるしい政治の1週間だった。初めてのドイツ首相のノルマンディー上陸記念式典参加は、独仏の「最終和解」という評価になったようだ。

  式典に続いて、EU各国では欧州議会の選挙に入った。6月10日から4日間にわたって各国で投票が行われる。EUの立法機関は欧州委員会で国民の投票によって選出される欧州議会は立法機関ではなく、諮問機関である。しかし、25カ国に拡大して直後の選挙だけに、その結果が大変注目される。

  すでに投票が終わった国では、全体的に低い投票率(4分の1から3分の1)が報告されているが、開票はまだなので、この選挙の周辺的な情報を拾ってみよう。
  
  *最初に投票を行ったイギリスでは、地方選挙が平行して行われ、労働党が第3党に転落した。もちろん、ブレアのイラク戦争参加に対する批判と受け取られているが、ある程度折り込み済みで、来年の国政選挙までにブレアがどう盛り返すかが注目されている。
  
  *おもしろいニュ−スは、イタリヤのベルスコーニ首相が、自党への支持を訴えた文を携帯にメ−ルしたという。3000万人に送ったというからすごい。
  
  *アイルランドでは国内問題についての国民投票が行われた。アイルランドでは、親の国籍を問わず、アイルランドで生まれた子に自動的に国籍を与えている。それで、妊婦がアイルランドに来て出産して、アイルランド=EU国籍を取得するの増えているという。それで、この制度をやめようという国の提案が圧倒的に支持された。(79%)
  拡大するEUに対する移民への願い、他方で、過酷な歴史によって人口400万人にすぎない、今や豊かな国の悩み。
  


   第4回  6月18日


  明日から、ロンドン、ダブリンに行きます。10月にもイギリスに行く予定なので、1年で3回行くことになります。日本にいながらも、EUのコラムを始めることにしたきっかけです。旅をしても、なかなかその国の状況はつかめないので、問題意識をはっきり持つようにしようと思ったわけです。

  この10年ほどで、ヨーロッパに4回行きました。「何かすごいことが起こっているぞ」というのが印象です。
  
  1回目は92年。統一に向けての転換点となったマ−ストリヒト条約の直後に、すぐ近くのドイツのデユイスブルグに行きました。そのときの感想は、「抱いていたヨ−ロッパのイメ−ジが変わってきているんだ、と強く感じました」。
  
  3回目は、ユーロスタート直後の2002年。確かにユーロは旅行するには便利なのですが、それ以上に統一にかけた「欧州人の決意」に圧倒されました。
  
  今回は特にアイルランドで、EUの新しきものを感じ取れたら思っています。
  


   第5回  7月4日


  1週間ほどイギリスとアイルランドを訪れ、EUの動きを、新聞とテレビで追ってみました。

     EUの主な動きは、次期EU代表の決定と欧州憲法批准に向けた動きでした。
  前者は、これまでの半年の持ち回り制の代表から任期2年半に移行するので、誰がこの新代表になるかの交渉です。各国間の利害が対立し調整が難航し、無難なポルトガル首相に決まったようです。

     それよりも長期にわたる論争点になるのが憲法の批准です。
  仕組みはよくわかりませんが、国内で国民投票にかけるのが8カ国で、特にイギリスが焦点になっています。国民の多数は憲法を生み出した国の誇りからか、欧州憲法に反対で、イギリスの修正を受け入れさせたブレアは、国内説得にやっとこ乗り出したところでした。
 すぐに判断を国民に迫っても不利なので、2年待って、2006年中の批准を目指す方針です。マスコミは欧州憲法の国民投票がブレアの「白鳥の歌」となるといっているようですし、労働党内にも「超国家に反対する労働党」のグル−プが結成されても、ブレア首相は相変わらずの自信で、憲法批准に向かって進むようです。
  この憲法の中身を、日本人としても、見てみる必要があります。
  
  *************
  向こうで得た感想を2点あげると、
  @統一における国語問題
  A拡大EU路線・・・・格差拡大と外国人労働問題
  
  
  @統一に向けた交渉・合意形成にとっての手強い相手が、各国の言葉の違いです。これは、改めて、見てみたいのですが、やはり、大変な作業です。
  英語優勢にならざるを得ないが、それを許すわけには行かないフランスのこだわりがあります。次期代表候補選びにも、中道左派の政治的立場だけでなく、英語は当然として、フランス語はしゃべれるという条件が問題となっていたのです。
  イギリスのBBCテレビが取り上げていて興味深かったのは、イギリスの小学校でEUの一つの国の言葉を選んで、少しでも話せるようにする取り組みが行われていること、多文化の街ロンドンで生きた外国語を学ぶのは容易で、楽しいというレポートをやっていたことでした。EUを意識して、英語中心主義を改めようとする試みが行われているのです。
  
  Aは僕の推測にすぎません。
  25カ国に拡大して、旧東欧国を受け入れ、経済格差の拡大に直面するEU。
  このことの当否が論争になっていますが、僕は、20世紀後半、移民労働力を受け入れて経済成長を維持してきた西欧諸国(企業)が路線を転換して、ヨ−ロッパ内の格差を利用する方向を採用したととらえています。
  それが本当かは追っていこうと思っていますが、年金問題−−少子化に直面する日本にとってよその出来事では決してないと思います。
     

   第6回  7月25日


  「拡大ヨーロッパの挑戦」(羽場久シ尾子)(中公新書)というタイムリーな本が出た。新書だが、注や参考文献がしっかりしている。

  筆者は中央・東欧が専門の法政大教授なので、中央・東欧からみた拡大EUの現状と問題点が中心となっている。次回加入が予定されているル−マニア、ブルガリアをも含めた分析と記述が行われていて、ユ−ゴスラビヤの分裂から内戦・戦争とめまぐるしく動いた旧東欧情勢についていけなかった者には、勉強になる。

  旧東欧諸国がヨ−ロッパ・NATOに接近し、「ヨーロッパ」が拡大し、その限界が問題になってきていること(イスラムのトルコを含み得るか)、EU拡大がロシヤに対する新EU諸国のビザ導入をもたらしロシアが「新たなヨーロッパの分断」と批判していることが紹介されている。
  
  最も興味深かったのは、この地域における、ロマ人やハンガリー人等の分散民族の問題を取り上げ、「民族の自己主張」から「多民族の地域における平和的共存」の方向を筆者が主張していることである。
  東欧における民族の主張→民族国家の形成が民族間紛争・戦争に至ったことの反省から、EU統合の中での共存へと向かって動いていることを紹介している。
  これは、民族−国家−EUという3重のアイデンティティ帰属の構造を生み出している、EUの統合の仕方の例として、注目される。民族戦争の悲劇を、民族国家という枠を越えた新しい舞台を用意することによって解決を図ろうとする、ヨ−ロッパの人々の知恵を感じないだろうか?   

   第7回  8月1日


  「拡大EU」をネットで調べてみた(日本語で)。

  ざっと見たところ、大したものはなかった。新聞の社説は地方紙を少し見た限りは、大変お粗末な情報量と表層的な論調が目立った。
  経済界は、巨大市場の誕生→投資のチャンスというわかりやすい立場での分析が多い。大阪商工会議所が現地調査を行い、参加者の感想を載せているのが目立った。
  
  一番関心があった、拡大EUと日本の関係については、見た限りほとんど分析や主張がないと言って良い。わずかに、EUにならってアジア共同体の建設を掲げていたのは勝共連合のサイトだけ。
  改めて、危機意識さえ希薄になってしまった日本の状況を知らされた。

  永らくイギリスに住んで、日本経済を見てきた森嶋通夫さんが「東アジア共同体」を提案しても(「日本にできることは何か」岩波書店 2001年)、日本で反響がないのを嘆いていた。亡くなる前に出版された「なぜ日本は行き詰まったか」(岩波書店)の最後に「日本の苦悩は限りなく続きそうである。」と書かれているのが、想い出される。     

   第8回  8月8日


  EUのサイトを開くと、現在の公用語の数、20だけのページが用意されているのがわかる。
  そのどれかに入ってみると、全部の情報がその言語で用意されているのではないのがわかる。EN,FRとかをクリックして開く英語、仏語しか用意されていないのもあることがわかる。
  
  EUの統一について感心してしまうのが、言語の問題の取り扱い方である。経済、政治と統一を進めてきて、通貨統合をやりきり、憲法・言語といったデリケイトな問題にタックルしている。
  言語についてのEUの立場はすっきりしているが、現状となると頭が痛くなるほど複雑である。
  
  原則はすっきりしていて、EUに参加する国は一つの言語を決め、それがEUの公用語とされる。そして、全ての公用語は議会等で同時通訳され、文書は翻訳される。
  つまり、言語の多様性は保証されるのがEUの原則である。
  
  公用語は4つからスタートし、11になっていたのが、今回の拡大で20になったのである。この現実の中で、原則が立ち往生しつつあるのが状況である。
  拡大前の11語の段階で、ブリュッセルにある欧州委員会と理事会で必要な翻訳者が1日2210名、ストラスブールの欧州議会で1日1342名。   これが、20からさらに増えていくと、コストはもちろん、人材供給・教育の面でも実現が遠のいていく。
  そこで、通訳の方式を「リレ−方式」にするか「リターン方式」にするかと言った議論や、「実務語」「中立語」の導入といった議論が出てきている。(「ヨーロッパの多言語主義はどこまできたか」 ことばと社会別冊)
     EU憲法の文案がまだ翻訳中で手に入らない状況がすでにあるし、第5回でふれた英語優位、フランスのこだわりが背後で進行しているのである。   

  以上の公用語の話と、全く違うレベルに、EUの人々が実際に使う言語の問題がある。 これは、教育の問題にもなるが、バイリンガルではなく、トライリンガルになろうというのが方針である。
  これについては、現状のデ−タが公表されている。
   ヨ−ロッパにおける言語 ・・・第1外国語としての英語の優勢がはっきりしている。     

   第9回  8月22日


  EUでの言語で最も注目されるのが、少数言語の保護・育成の取り組みである。
  EUは少数言語の振興を押し進めてきている。1982年に少数言語欧州事務局を設立し、1998年には「民族的少数者保護のための枠組み条約」「地域語少数言語欧州憲章」を発効させ2001年を「欧州諸言語年」として取り組みを進めてきている。
  
  国民国家の時代に消滅に向かった少数言語をどのように復興させて来ているかの良い報告がウェールス語(カムリー語)についてある(「ヨーロッパの少数言語」コリン・ウィリアムズ 「ヨーロッパの多言語主義はどこまできたか」p26 ことばと社会別冊)。議会、教育、テレビでの少数言語の使用から、「言語復興運動のリトマス試験紙」である職場・経済における使用へと進む取り組みが細かく報告されている。

  EU市民で少数言語を使う4000万人を代表する少数言語欧州事務局のホームページで取り組みがわかる。
  多様な言語、多様な文化にヨーロッパの強さの源があるという考えと分権化・地域コミュニティーの重視が、少数言語保護の背後にあると思う。

  国境を越えようとするEUの試みが、膨大な官僚機構を生み出さざるを得ないとしても、 その試みを見守りたいと思う理由がここにある。
  そして、「英語帝国主義」に対して自国語を守ることを主張するのは一見理解しやすいが、フランスは他方でフランス語の憲法上の地位を強化して、少数言語を認めようとしない側面も見ておく必要がある。「フランスはただ一国その流れ(文化的・言語的多様性の尊重)に逆行しているのです。」(フェルナンド・ド・ヴァレンヌ「ヨーロッパの多言語主義はどこまできたか」p25)

   第10回  9月20日


  EUの言語に対する取り組みの、とりあえずのまとめとして、その壮大な実験を紹介しておきたい。
  英語の国際テストであるTOEICの作成団体,ETSのホームページを見ると、ヨーロッパにはCEFという言語教育の仕組み、評価制度があり、それとTOEICの点数との換算表を示していることがわかる。
  このCEFが「ヨーロッパ共通枠組み」という壮大な実験、取り組みである。

  CEFの内容は日本語で読むことができる。
  まず、「多様な言語と文化の豊かさは価値のある共通資源」であるという基本認識の下、その多様性を障害物から「豊穣と相互理解の源」に転換させるために、「言語熟達度を表す客観的基準」を提示する。
  具体的には、A1からC2までの6レベルを設定し、聞く、話す、読む、書く、各能力について細かく定めている。そして、一人一人の言語学習、異文化体験を記述、記録する ポートフォリオELPの仕組みを作り上げている。

  こうした制度、取り組みは、多くの言語が共存する多言語主義を乗り越えた複言語主義に基づくことが宣言されている。
  この複言語主義をまだ理解できていないのだが、様々な言語を切り離さず、ミックスして、コミュニケーションを図る考え方のようだ。「会話の途中で言葉を別の言語に変えることもあるし、方言を使いだすこともある」

  このCEFの試みは注目する価値があると思う。英語評価の世界標準=TOEIC、なんて単純ではない。(これも、脱「ア」入欧の一例となるか?)

   第11回  10月8日


  EUの「壮大な実験」で驚かされたのは、前回紹介した言語だけではない。
  ガリレオ計画のことを知り、本当にびっくりした。

  私は自動車は運転するが、GPSは使わない。道を覚えるのではなく、機械に頼ろうとは思わないことと、アメリカの軍事衛星に頼り切るのもいやだからだ。

  そこで、EUが独自の衛星測位航法システム、ガリレオ計画を、現在のGPSを上回る精度を目指して進めていることを知って、EUは本気でアメリカに依存しない社会を構想していることを知らされた。

  ガリレオ計画については、知っている方は詳しいと思うので、詳細はネットで当たっていただきたい。
  アメリカが中止の圧力をかけたが、EUはそれをはねのけ、相互運用で合意(最終合意04年6月)ができ、08年運用開始を目指して、欧州あげて取り組んでいる。

  ガリレオ計画の実現がはっきりした現段階では、焦点はこの計画に参加するEU以外の国の動向に移っている。
  すでに、中国、インド、さらに、イスラエルが参加を表明している。EUは日本に参加を呼びかけているが、アメリカ=GPSべったりの日本の反応は言わずと知れている。
  衛星打ち上げ失敗とこのガリレオ計画への対応を日中で比べると、この両国がどっちを向いて進んで行こうとしているのかが、否応なしにはっきりする。
  トヨタがガリレオ計画に関心を持っている、参加を検討している、という情報を読んだ気がしていて、確認したいと思っている。


   第12回  10月16日


  「ガリレオ計画」よりもっとビックリさせられたのが、航空機の「エアバス社」である。

  外国旅行に行くので、飛行機には乗るが、飛行機には興味はあまりない。どうぜどれも、ボーイングで、変わりは少ないと思っていた。
  ところが、田中宇さんの「アメリカ「超帝国主義」の正体」(小学館文庫)だったかで、今はエアバス社が航空機のトップメーカーで、それはEUの企業だと、初めて知った。
  これには本当に驚いてしまった。「エアバス」とは、「ジャンボ」と同じように飛行機の種類だと思っていた。今年、ヨーロッパに行ったときには、乗る飛行機に気をつけるようにしたら、確かにエアバス社の飛行機に乗っていることを確認できた。

  この世界に詳しい方は周知のことなのだろうが、少し紹介すると、
  *田中宇さんの個人サイトでも記事がある。
  *エアバスの次期主力機A380の紹介とボーイング社との競争をまとめたページもある
  *世界の航空機の受注状況がリアルタイムで分かるのにもビックリ。
  *そして、日本に売り込みをかけるエアバス社の日本語サイト

  国産ジェット機を開発できず、ボーイング機をひたすら買い続ける日本。対して、国境を越えEU機を作り上げ、ボーイング社の世界支配に並び、うち勝ってしまったヨーロッパ。とりわけ、大型機では、2006年以降はA380の独壇場となる。ボーイングはかろうじて、中型機の開発を決断したが、それは開発費を日本に同額負わしてである。

  A380が本当に「環境に優しい」のか、超ワイド機が良いものなのか・・・良くは分からないが、最先端の世界で大きな変動が起きているのは確かである。
  EUが本気で、そして着実にアメリカの支配に対抗しようとしていることを思い知らされる。  

   第13回  12月11日


 しばらく、さぼっている間に、EUは新欧州委員会(内閣)を成立させた(11月18日)。
  25カ国から1人づつ委員を出すこの委員会の選出は、人選で難航を極め、成立後もごたごたが続いている模様。 しかし、この委員会は性格、役割がややこしいので、この間の動きの紹介はまた後にしたい。

 12月に入って目立つのが、米との争い。
 前々回に紹介したガリレオシステムは、英国で衛星がもう組み立てられ、来年打ち上げの準備に入り、ヨ−ロッパでは具体的な話題になっていると衛星テレビが報じていた。これに対して米国は、中国の利用をブロックする技術を開発し、牽制を強めている。

 さらに、激しいのがエアバスーボーイングを巡る動き。  EUの新経済担当相と米国の最初の会談がこの飛行機を巡る交渉だった。10月6日に、双方が、それぞれのエアバス、ボーイングに対する経済援助を違法としてWTOに提訴。(米の数時間後にEUが対抗提訴をしたというのだからすさまじい。)  60日の協議期間が切れたのでWTOに舞台が移るはずなのが、そうなると双方とも負けるので(両巨大企業を国家が支えているのは、当然の事実だから)、もうしばらく協議を続けるらしい。

 国家の威信をかけた、むき出しの対決、駆け引きが展開されている。面白いのが、WTOの使われ方で、自由貿易やWTOスタンダ−ドの虚構性が丸見えになっている。と言うか、そのWTOを道具として使い切る米,EUの政治力のすごさに注目すべきか。  

 *簡単な米の報道  Voice of America
 *もう少し詳しい報道  エコノミスト


   第14回  12月18日

EUをめぐる大きなニュースが、トルコ加盟問題である。トルコのEU加盟に向かって動き始めたことは、日本国内の報道でも大きく取り上げられている。EU最大の人口を抱える(ことになる)イスラム国の加盟が、キリスト教・ローマ文明のEUとの軋轢を様々なところで生じさせるだろう、と言われている。

しかし、今日取り上げたいのは、以下のニュースである。

 人魚姫像にイスラム衣装 トルコ加盟に反対?
 【ロンドン16日共同】デンマークからの報道によると、コペンハーゲンの観光名所「人魚姫」像に、イスラム教徒の女性が着るブルカのような黒い衣装がかぶせられているのが16日見つかった。ロイター通信は、棒を使って衣装を取り除こうとする日本人観光客の写真を配信した。  衣装には「EUにトルコ?」と書かれたたすきが掛けられており、トルコの欧州連合(EU)加盟交渉開始の是非をめぐって同日開かれたEU首脳会議に合わせて、加盟反対派が夜中にいたずらしたとみられる。  「人魚姫」像は、アンデルセンの童話を基に1913年に建てられた。観光客に人気があるが、64年と98年には頭部が切断されるなど“災難”が続いている。(河北新報)

この、ロイター配信の写真が、12/18の毎日朝刊に載っている。
写真はその瞬間の映像だけしか伝えないが、この写真は衝撃的だと思った。トルコ加盟におそらく反対する人が、人魚姫にイスラム女性の黒い衣装を着せて隠したのを、日本人観光客(女性)が実力行使して、棒で取り外そうとしているのである。
せっかくコペンハ−ゲンまで来て、人魚姫の写真を撮ろうとしたら、隠されているので、実力行使してでも、写真を撮りたい。「トルコ加盟」,「EU」なんて関係なく、ともかく「私の記念写真」だけしか頭にない日本人の姿を、これほど、見事に示す映像はない。
この写真を配信した人の意図は知らないが。  

   第15回  2005年1月2日

トルコのEU加盟問題で「ヨ−ロッパ」とは何かが問われている。トルコは確かに地理的に東の方に位置するが、EUにはキリスト教・ローマ文明の大きな共通項が存在していることが明らかになってきているのだと思う。

そこで、ベクトルの反対側で、似たような問題をEUは抱えていることに気が付く。
バスクのETAと北アイルランドのIRAである。戦争と闘いを繰り返してきたヨーロッパが、なお抱える武装対立の火種だ。後者は和平に向かっているが、前者はまだ解決していない。バスク人、ケルト人(の末裔)という古代ヨーロッパからの「生き残」った人々のこだわり、と頑強さを背後に感じる。

バスクはスペインとフランス、北アイルランドはイギリスとアイルランドにまたがる問題で、こうした問題に対してEUは「多重的なアイデンティティ」を提供する基盤を持っているから、そして、キリスト教の枠内にあることからも、両問題はいずれはEUの中で解決していくのだろう。

とりあえず、現状では、本当に紆余曲折を経ながらも、和平に向かっている北アイルランド問題に注目が行く。
この和平の立て役者は多くいるが、最大の牽引者がIRAの政治組織・シンフェイン党のアダム党首であることは間違いない。 そのアダムス、シンフェイン党の立脚思想となっているウルフ・トーンについては、あまり日本では知られていないので紹介したい。
現在のEUにとっても基本となる思想だと思うのである。

ウルフ・トーンはアイルランド革命の原点となったユナイティッド・アイリシュメンの創始者で、1798年フランス軍を指揮して武装蜂起するが、捕らえられ、死刑宣告を受け、自殺した。
早すぎた蜂起で、あっけなく敗れ、アイルラン独立革命の「殉教者」の名簿の先頭にその名を記す。しかし彼が今日も記憶されているのは、彼の思想にある。 アダムスとシンフェイン党の発言を見てみよう。

まず、「シンフェインについて」の文書で「シンフェインの政治的起源は、アイルランド共和主義を起こした、ウルフ・トーン率いるユナイティッド・アイリシュメンである」 と明らかにする。
そして、2002年、トーンの墓前でアダムスは、トーンを「アイルランド独立の基礎を築いた人」とたたえ、「トーンの闘いを受け継ぎ、アイルランドの完全な独立と統一を達成する我々の誓い」を確認する。
「シンフェイン党はカソリック政党ではない」「我々が求めるのは以下のトーンの思想である{全てのアイルランド人を統一させること、過去の不和の記憶を完全に消し去り、プロテスタント、カソリック、国教反対者の名称に代えてアイルランド人の共通名称を掲げること}」(トーン死後200年墓前演説)

プロテスタントであったにもかかわらず、アイルランド独立に命を懸けたトーン。その思想を受け継ごうとする、シンフェイン党の以下のようなリアリズムに私は共感する。
「この小さな島国の全ての男女の知恵、生活経験、才能と創意に我々は頼るしかない」(トーン死後200年墓前演説)

<資料>
シンフェイン党  上の資料は全てこの膨大なページにある。
ウルフ・トーン紹介(トーン家のページ)

   第16回  1月21日

ここで、取り上げ、紹介してきたEUの動きを、同じような観点で展開している本が出たので紹介します。

宮島喬著の「ヨーロッパ市民の誕生」(岩波新書)は「開かれたシティズンシップ」と言うサブタイトルで、統合が進むヨーロッパでの、国籍、言語、社会的権利の変容を追っている。
その基本的立場は、単に新しい動きを紹介するというのではなく、ヨーロッパで生まれた「市民」「国民」等の概念が変化し、新たな概念が生み直されて来ているのではないか、というものだと思う。「デニズン」「パリティ」など初めて出会う言葉が新鮮だ。

ヨーロッパの新しい動きを追いながら、筆者の関心が日本にあることを明確にしているのも本書の特色だ。プロローグとエピローグで、ヨーロッパと日本を対比させて、日本の「難民小国」「閉鎖性」を浮き彫りにしている。

多元性の観点から、EUの動きを、日本と対比させつつ簡潔に紹介するタイムリーな本だ。



   第17回  5月22日

■あっという間に、更新しないまま4ヶ月も経った。
この間、3月に、イギリス、アイルランドを訪れたが、EUがらみで新しい発見はなかった。ただ、レンタカーに乗ったことから、自動車交通のコントロール方式まで、「アメリカ式」=信号方式ととらえて、対案を実践していることを知った。こちらで紹介しています

■さて、EUではこれから憲法条約の各国での国民投票が本格化する。
5月29日がフランス、続いて、オランダが予定されている。しばらくは、この憲法条約をめぐる動きを追ってみたい。

■憲法条約は、EUの拡大強化を、法制的には継ぎ足し、つぎはぎで対応し乗り切って来たのを、去年の25ヶ国への拡大を契機として、根本的に改めようとしているのである。草案確定までの経過は複雑で、その内容は膨大である。さらに、批准手続きも非常に分かりづらい。だから、それは、改めて、紹介したい。
とりあえず、1ヶ国でも批准できなければ、憲法条約は有効にならず、その見通しは、フランスでは難しく、さらに、来年に予定しているイギリスではもっと暗い。

■と言うわけで、フランスでの国民投票が1週間後に迫っている。ドイツと共にEUを引っ張ってきたフランスで憲法反対の動きが広まっていて、フランス政府は賛成確保に向けての動きを強めている。
他方で、「左」からの反対も聞こえてくる。「多国籍企業の憲法」「欧州軍国主義」と。 欧州反資本主義左翼の声明
浜矩子さんが毎日新聞で述べていたように(5月15日)憲法条約をめぐる評価の対立が「憲法条約の中味と直結はしない。」と言う感じが、確かにする。だから、この憲法条約の中味を検討する必要がある。

   第18回  5月31日

■5月29日、フランスの国民投票で、EU憲法条約は否決された。
大変なことがあっさり、決まってしまった感じだ。予定されていない筋書きの展開に、 フランス国内も,EUも大慌てで、これから対応を考え出すと言う状態だろう。
拡大EUの動きを追って行こうとして1年、言い出しっぺのフランスがNO!と言い事態になるとは思ってもいなかった。

■そこで、googleのNEWSで、今日、追ってみた。
EU憲法への判断と言うより、フランス国内状況の反映で、シラク大統領に"NO!"と言う側面が強いみたいだ。
これは、30日の日本の夕刊も報じていたように、02年の大統領選で極右のルペンが勝ち残ったのに対して、シラク支持にまわってルペンを押さえた、フランスの左翼によるしっぺ返しの面があるようだ。

■しかし、もう一つ、気がついたのは、イギリス、ブレアの「影」。
憲法条約の国民投票で一番窮地に立っていたのは、ブレア。だから、フランスが否決して憲法条約の批准が中止になれば、一番助かるのはブレアなのは間違いなさそうだ。

■そこに、さらに、こういう事情があったようだ。憲法条約の批准の方法は国民投票以外に、国会の議決もあり、これが明確に法律で決まっていない国が多く、政治判断に委ねられているのが、そもそも、話が分かりにくい背景となっている。
国民投票に持ち込むのに気が重いブレアがシラクを挑発して、フランス国民投票を決めさせたと言う経緯があったようなのだ。この事実は確認する必要があるが、本当だとしたら、休暇を取って、フランスの国民投票を見学していた、ブレアはやはり大した「政治家」だと言うしかない。
今年の7月から、イギリスはEUの議長国となる。

   第19回  2005年9月25日

■9月21日、欧州委員会は憲法条約の発効を当面断念した。フランス、オランダでの国民投票での否決から大いに揺れたこの問題のとりあえずの決着が付いたことになる。92年のマーストリヒト条約以来、順調に進めてきた欧州統合の動きが一とん挫して、調整を迫られるのは間違いない。

■昨年5月にこのコラムをスタートしたときには、想像し得なかった事態になってきている。国家連合から、一歩前へ行く試みが、とりあえず失敗しただけで、EUが崩壊するとかと言った事態ではない。とはいえ、一歩後退をもたらしたものは何か、一歩後退が何をもたらすのかを見ておく必要はあるだろう。

■まずは、EU統合の推進力であった独仏の地位低下は避けられない。憲法条約否決のきっかけを作ったフランスはもちろん、総選挙に追い込まれて、次期政府の姿すら打ち出せなくなったドイツのシュレーダー政権も推進力を失った。変わって、前回、少し触れたように、憲法承認で窮地に追い込まれていながら、粘り腰を発揮したイギリスのブレアーが目立ってくる。

■今回のフランスの国民投票では、EU統合より、国内経済優先、アングロサクソン的グローバライゼーション反対の傾向が強く出たような感じがするが、その事をどう見るかは難しいと思う。
国内問題での判断・評価になってしまったこと自体が、これまでのEU政策に対する国内合意の不充分さが表れたものとして、EU側ではとらえて、調整・再挑戦することになるのではないか?

■国内問題になってしまったということは、ヨーロッパ全体の問題に対する国民の関心が下がってきたことになる。トルコの加盟問題に対する拒否反応が報じられているが、若年層での憲法条約反対の動きが注目される。フランスで今回、反対が多かったのは、地方と共に年齢の若い層だという。EU統合を推し進めてきた、戦争体験世代、あるいはその体験を受け継ごうとしてきた世代とのギャップが表れて来ている。これは、日本でも考えさせられる問題だ。

■イラク戦争以来の、アメリカ単独覇権に対する「古い」EUによるバランス、多極化という構造が崩れて、次の段階に進むのだろう。EUはあきらめず、再調整を進めて行くにせよ、世界の動きは新しい段階に動いていくのが、今回の憲法条約の発効断念の結末だろう。どこへ向かって世界が動くのかをしっかり見ていく必要があると共に、EUの動向、今回の憲法条約の中味も、じっくり見ていく必要がある。

フランス社会党内の憲法条約に対する論争
否決されたEU覇権 (田中 宇の国際ニュース解説)

   第20回  2005年10月6日

■憲法条約断念についてEUがどう論じているか見てみようとしたが、膨大なEUのサイトからはなかなか見つけられない。とりあえずは、変わることなく様々な取組が進めれらている。EUはとてつもなく巨大だと思い知らされる。

■日本の国際ニュースがバリの爆発事件に集中している間に、ヨーロッパでは、大きな動きがあった。
トルコのEU加盟の決定だ。もちろん、加盟交渉を進めていくことの決定だ。決定期限が迫っていて、10月3日に外相会議で決まった。
オーストリアがトルコ加盟に反対して、限定資格を主張したのを、議長国となっているイギリスが長時間の会議で説得したらしい。クロアチアの参加交渉を認めるのが、交換条件になっていることが、新聞も報じている。

■憲法条約はとまったが、EUの拡大は、イスラム国へも続けられることになった。トルコの加盟については、フランスやオーストリアでは、また国民投票にかけるという手続きがまっているが、ともかく、全体としては、拡大の動きは止められなかった。

■トルコの加盟に関しては、アメリカの支持もあったらしいが、何よりも、押し止めることが出来ないEU拡大の動きの強さが目立っている。
この拡大の構造を、アメリカの覇権主義と対比して論じている、イギリス人マーク・レナードの本「なぜヨーロッパが21世紀をリードするか?」が面白かった。→レナードのサイト
この間のEUの拡大は、アメリカ帝国主義の外部からの、軍事的支配とは全く異なり、EUが設定した加盟基準に到達しようとする各国の内部変革によるもので、EU自身もこれを拒否できない、全く新しい形の「拡張」である、と主張している。
トルコのEU加盟に向けた取組を見ていると、この主張の説得力を確かに感じる。

   第21回  2008年6月16日

■3年ほどこのページの更新をさぼっていたら、大激震がやってきた。リスボン条約のアイルランド国民投票での否決。2005年の憲法条約の仏、オランダでの否決にもかかわらず進められてきた、欧州統一への動きがとん挫しそうである。しかも、リスボン条約の批准は順調に行くと思っていた矢先のことである。

■何が起こっているのか、どうなっていくのか、また、追って行かざるをえない。欧州の行方は日本の将来にとって大事と、今でも思うから。


■この3年の間に、ブレアやシュレーダーなどの顔ぶれはすっかり変わってしまった。そして、統一への動きも一直線ではありえず、複雑になってくる。さらに、憲法条約への賛否が割れていることも、前に、紹介したが、この問題にもっと向き合い、どういう亀裂なのかを見て行かざるをえない。
難しい作業になりそうだが、時間をかけても調べてみよう。

   第22回  2008年6月18日

■まず、「リスボン条約」とは何か?。
2005年にフランスとオランダにおける国民投票で欧州憲法条約批准が否決された。EUの基本条約の枠組み改定には全加盟国の賛成が必要であるため、欧州憲法条約は発効が断念された。
この両国での国民投票の結果を受けて「熟慮期間」が設定され、2年間の熟慮期間が切れた2007年から、新条約の検討が始まった。

■2007年6月、欧州理事会において新条約の枠組みが合意され、政府間協議 (IGC)を経て、EU加盟27カ国の首脳は、2007年12月13日、議長国ポルトガルの首都リスボンでリスボン条約と称される新基本条約に調印した。そして、2009年1月1日の発効を目指して各国での批准手続きが行われてきた。

■問題はその中味だが、膨大だった憲法条約の5分の一になったとは言え、良くは分からない。EUによれば、憲法条約とは異なり、「同条約は既存の基本条約を改 正するもので、それに取って代わるものではない。主な改正点は、加盟国議会のEU立法への関与強化、EU意思決定手続きの効率化と簡素化、EU基本権憲章 への法的拘束力の付加、EUへの法人格の付与、外交政策のEU外務・安全保障政策上級代表への一本化、EU理事会常任議長職の創設など。」

■連邦を強化させたのか、後退させたのか判断は容易ではない。少なくとも、憲法条約批准失敗の痛手にも関わらず、独仏が粘り腰を発揮して、統一への動きを中断させまいとしていることは確かである。
そして、3年前の教訓を踏まえて、国民投票による批准を避けて、議会内承認の道を選んだのである。その唯一の例外がアイルランドで、憲法上の制約から国民投票が必要だったらしい。

■そのアイルランドの国民が、6月13日に「NO」の答えを出した。
思わぬこの結果にEUはどう対応するのか?次ぎに、それを追ってみたい。

   第23回  2008年6月29日

■6月19,20日にEU首脳会議が開催され、リスボン条約批准をどうしていくか協議された。結果は、批准継続となった。

■この結果は、どうと言うこともないように見えるが、内実は大変な政治闘争になっていると思う。
まず、アイルランドの批准否決は寝耳に水で、「小国の反乱」だった。与野党一致でリスボン条約に賛成し、批准前進の結果は確実と見られていた。それを、シンフェイン党の反対などで否決との結果がでて、推進派は息詰まってしまった。

■チェコスロバキヤ等の条約反対派は勢い付くし、1ヶ国でも否決は許されないので、アイルランドを切り捨てるか、条約を又修正して批准をめざすのか、難しい選択を迫られることになった。しかし、両方とも選択するわけには行かないので、今回、批准推進派の独仏などが出した結論は、批准継続で強行突破の方針であり、「解決はアイルランドが自分で考えろ」とアイルランド政権にとりあえず下駄を預けたのである。

■この問題の日本マスコミの取扱いは、毎日新聞を除いて低いようだが、それは、欧州統一が有している重みについての認識が鈍いからだと思う。2005年の憲法条約をめぐる論争に再び戻って、見ていく必要があると感じる。     

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更新日 2008/6/29