ホームへリンク 図書館で借りてきた本へリンク

浅田次郎氏の作品のページ

(右の写真は靱公園です。)
靱公園の写真

1951年東京都生まれ。高校卒業後、多彩な職歴を経て、「とられて
たまるか!」(学習研究社・東映Vシネマ化)でデビュー。「きんぴか」
(天山出版)、「競馬の達人」(KKベストブック)、「気分はピカレスク」
(飛天出版)などの著作がある。なお、1995年、「地下鉄に乗って」で
第16回吉川英治文学新人賞、1997年、「鉄道員」で直木賞を受賞。
「蒼穹の昴」「日輪の遺産」「珍妃の井戸」も好評な作品である。


[目次]
鉄道員 プリズンホテル 霞町物語 プリズンホテル春 
プリズンホテル秋  プリズンホテル冬  天国までの百マイル
月のしずく  日輪の遺産 天切り松 闇がたり 
 
見知らぬ妻へ  シェエラザード  きんぴか1  きんぴか2
きんぴか3  地下鉄に乗って  天切り松 闇がたり 第二巻
残侠
  壬生義士伝  姫椿  薔薇盗人  蒼穹の昴  

(順に本名・出版社・発行日・蔵書先 なお、敬称は略させていただきます)
評価は無印から★★★まで4段階、★2つ以上が借り得本です。
1.鉄道員  集英社 ★★ 直木賞受賞作  1997年4月30日発行
  大阪市立福島図書館 

[目次] 鉄道員 /ラブ・レター /悪魔 /角筈にて /伽羅 /うらほんえ/
      ろくでなしのサンタ /オリオン座からの招待状。

帯には、「浅田次郎がつむぎだす珠玉の短編集。あなたに起こるやさしい奇蹟」と
書かれておりました。「鉄道員」は皆様ご存知の娘さんの幽霊のお話、「ラブ・レタ
ー」は警察にパクられた裏ビデオ屋の雇われ店長である高野吾郎が、偽装結婚し
てやった中国人女性の白蘭の病死を知らされ、彼はしようがなく遺体を引き取り
に行くお話。「悪魔」は、主人公の家庭教師が悪魔だったというお話、「角筈にて」
は、大手商社のエリートだった主人公が大左遷され、両親に捨てられた過去を振
り返り、死んだ父に再会するお話です。

「伽羅」は、都内のお屋敷町にあるブティックの女主人が<女の生霊>だったと
いうお話、「うらほんえ」は、両親が離婚し親権を放棄したため、祖父母に育てら
れたちえ子が離婚されそうになった時に、死んだ祖父が出てくるお話、「ろくでな
しのサンタ」は、クリスマス・イブに起訴猶予で釈放された三太が、留置場で出会
った男の家族が気にかかり、クリスマスプレゼントをなけなしの金をはたいて持っ
て行くお話。「オリオン座からの招待状」は、別居している主人公が妻とともに、
誰もいない故郷へ里帰りするお話です。

この本は短編集です。いろんな作品が詰まっているのですが、つまらないのも
けっこうあるのですが、泣けてくる作品ばかりなのでした。特に、「ラブ・レター」
の白蘭さんのたどたどしい手紙がとても胸に響いたのでした。
庶民の心に直接響く作品が多い浅田次郎さんならではの世界が展開していた
のでした。

▲先頭へ
2.プリズンホテル ★★★  徳間書店  1993年2月28日発行  
大阪市立福島図書館

[あらすじ] 極道シリーズを書いている偏屈な小説家「木戸孝之介」が主人公
です。彼の叔父が奥湯元あじさいホテルを建てたことから話は始まります。彼が
20万円で面倒をみている清子を連れて、このホテルに行くのですが、このホテ
ルの凄いこと!従業員は仲蔵親分の子分と、仲居さんはタガログ語を話すので
すね。でも、とっても温かみのあるホテルなのです。このホテルに、大手ホテル
から出向させられた新支配人やフランス料理のシェフ、大手商社を定年になった
元財務部長の夫婦、一家心中をしようと訪れた家族連れ、刑務所から出てきた
ばかりのヒットマン、任侠団体客、その上、このホテルで一家心中した元オーナ
ー一家の幽霊まで登場してムチャクチャな展開になっていくのですが。

「このホテルには不思議な負のエネルギーが凝り固まっております。粗野で凶暴
で非常識で、全く油断ならないおどろおどろしい場所ですが、私にとってたいへん
思い入れ深い夢の館でございます」と著者さんが言っているのですが、読んでい
ると何となく行ってみたい気がしてくるから不思議なんですね。
この作品のあと、シリーズ(春・夏・秋・冬編)が出ているようなので、また借りて
こようと思ったのでした。

▲先頭へ
3.霞町物語 ★★  講談社  1998年8月20日発行  
大阪市立図書館共有

[目次] 霞町物語 /夕暮れ隧道 /青い火花 /グッバイ・Dr.ハリー /
      雛の花 /遺影 /すいばれ /卒業写真。

帯には、「会いにいきたい、あの日の君に。輝かしい青春を、僕らはこの町で生き
た。浅田次郎が初めて書いた、著者自身の感動の物語」と書かれておりました。

この本は短編を集めた連作小説です。主人公は著者自身で、登場する家族は
「写真師伊能夢影」という祖父、入婿の写真家の父、それに母、そして亡くなった
祖母たちです。「霞町物語」は、高貴な伯爵令嬢の梶井明子との恋のお話、「夕
暮れ隧道」は、亡くなった先輩カップルの力を借りて、主人公が同級生の真知子
と結ばれるお話、「青い火花」は、廃止される都電の花電車を祖父が父の協力を
得て、すばらしい写真を撮るお話、「グッバイ・Dr.ハリー」は、ピンチヒッターの新
任英語教師ハリソン氏のお話です。「雛の花」は、祖母の哀しい過去の出来事の
お話、「遺影」は、祖母が昔恋仲だった事業家が写真を撮りに来るお話、「すいば
れ」は、内房の保田海岸で働いている谷さんのお話、「卒業写真」は、祖父が、亡
くなる前に一冊の卒業アルバムにまさる一葉の卒業写真を、主人公たちに残した
お話です。30年前の古き良き時代に、輝かしい青春を過ごした主人公の出来事
を綴ったものですが、祖父さんは写真の名人だったのですね。写真を撮る時に、
「あっち、ねえ、さん、」と声を上げて、シャッターを押すんですね。家族の温かみや
哀しみがしんみりと心に伝わってきて、ジーンとくる小説なのでした。

▲先頭へ
4.プリズンホテル春 ★★★  徳間書店  1997年1月31日発行
大阪市立福島図書館

帯には、「桜吹雪舞う極楽宿に歓喜の大団円! 花冷えの春、賞を待つ作家と、
肚にいちもつを抱えた老若男女がプリズンホテルへ向かった。」と書かれており
ました。

[あらすじ] 偏屈な小説家木戸孝之介の作品が二冊も、日本文芸大賞にノミネ
ートされてしまうことから話は始まります。それらの作品は、「哀愁のカルボナー
ラ」と「仁義の黄昏」なのですが、さて、受賞できるのでしょうか!? また、育て
の母である富江さんが失踪してしまい、主人公は失意のどん底に落ちてしまうの
ですが、彼女を見つけることができるのでしょうか...?
この本では、52年も府中刑務所でお勤めをした死にぞこねの懲役、緋桜の弥一
や倒産寸前の内装工事屋の楠堀留、孝之介の妻となった清子に連れ子の美加
、そして「木戸番」と呼ばれる担当編集者たちが、このホテルに集まってきて、ホ
テルの従業員ともども、ムチャムチャな展開となっていくのですが....。

プリズンホテルの続編だと思って借りてきたのですが、なんと次の作品は「秋」だ
ったのですね。順番が違ってしまいましたが、とても面白くて哀しくて感動の一冊
なのでした。

▲先頭へ
5.プリズンホテル秋 ★  徳間書店  1994年8月31日発行  
大阪市立福島図書館

帯には、「実力派が笑いと哀愁で紡ぐ愛と涙の傑作・極道ファンタジー巨篇!」と
書かれておりました。
[あらすじ] 話は、八代目関東桜会総長・相良直吉の訃報を受けたところから始
まります。好奇心旺盛な主人公・木戸孝之介は、大幹部である仲蔵叔父にお願
いして、密葬に出かけ、その後、プリズンホテルへ行ったのですが....。今回
の登場人物たちは、秋の旅行シーズンに一万円ポッキリの予算で宿泊する青山
警察署御一行(50名)と、大曽根一家御一行、そして、孝之介が月々20万円で
面倒をみている清子の一人娘で六歳になるミカ、今は落ちぶれた元アイドル歌手
とそのマネージャー、大歌手の真野みすず、指名手配中の集金強盗、それにい
つも通りのホテルスタッフ達です。

あいも変わらず、大宴会場では、隣り合わせた警察署御一行と大曽根一家御一
行との間で、煮えたぎった油の入ったフォンデュ鍋と金串、土瓶蒸しの土鍋など
が飛び交い、一人の女がピストルを持ち込んで、ぶっ放したりと、ムチャクチャな
展開が健在なのでした。

この作品は、「プリズンホテル」の続編です。丸暴のデカと、ヤクザがホテルで一
緒になり、最後は仲良くホテルを後にするという設定は、浅田次郎氏ならでは
だと思ったのでした。一度読んだらやめられないシリーズですので、ぜひどうぞ
!?

▲先頭へ
6.プリズンホテル冬 ★  徳間書店  1995年9月30日発行  
大阪市立福島図書館

帯には、「冬山に轟く愛と涙の極道讃歌!! 外は一面の雪景色−それでも事
情ありの客人たちは再出発を賭けてプリズンホテルへ!」と書かれておりまし
た。

[あらすじ] 神田駿河台にある「山の上ホテル」でカンヅメになっている主人公
・木戸孝之介のところに、他社の原稿取りの特攻隊の女性編集者が訪ねてき
ます。このため、孝之介は、清子を連れて、厳冬のプリズンホテルへ逃げ出す
のですが....。

今回の登場人物たちは、救命救急センターに勤める<血まみれのマリア>
こと・阿部婦長、自殺しようと思って家出してきた太郎少年、彼を山中で助けた
<ヒマラヤの英雄・孤高のソロ・クライマー>武藤嶽男、女性編集者の荻原
みどり、安楽死の治療をしてしまった<鎮痛医療のスペシャリスト>の平岡医
師、そしてお馴染み、プリズンホテルのスタッフ一同です。

この作品も非常に面白くて、腹を抱えて笑ったり、泣きそうになったりする場面
がめじろ押しなのでした。その時期に起こった社会事件をうまく織り込みなが
ら、ペーソスたっぷりに市民の目線から描いている著者さんには感心してしま
ったのでした。なお、この本は、上記の「プリゾンホテル秋」の続編です。

▲先頭へ
7.天国までの百マイル ★★★  朝日新聞社  
1998年12月1日発行  大阪市立福島図書館

帯に、「愛されることは幸せじゃないけど、愛することって幸せだよ。会社も金も
失い妻子とも別れたろくでなしの中年男が、年老いた母の命を救うため、<奇
跡>を信じて百マイルをひたすら駆ける−親子の切ない情愛、男女の哀しい
恋模様を描く感動の長篇小説。

経営する不動産会社を潰してしまった城所安男は自己破産者となり、別れた
妻への仕送りにも頭を悩ます日々を送っている。そんなある日、狭心症で入院
中の母を見舞った安男は、主治医から母の心臓が極めて危険な状態である
ことを知らされる。安男は母の命を助けるために、天才的な外科医がいる千葉
県鴨浦町のサン・マルコ記念病院をめざして、オンボロ・ワゴンで百マイルの旅
に出た・・・・。バブル崩壊による自己破産、離婚、子供たちとの別れ、そして重
い病を患う老母−病める現代社会を象徴する家族の問題を描く、小説トリッパ
ーに好評連載された直木賞受賞後初の長篇小説」と書かれておりました。

保険の外交員をしながら、子供四人を育て上げた母と、りっぱになった三人の
子供たち(長男は商社マン、次男は医者、長女は銀行支店長夫人なのです)
と、自己破産してしまった末っ子の主人公とのやりとりが秀逸です。昔ならどこ
にでもころがっていた題材なのですが、裕福になってしまった現代社会では、
「幸福はお金で買える」という考えが蔓延しているせいか、自分達の生活を守
るのを優先させてしまうのですね。貧乏のどん底に落ち込んでいるからこそ、
命がけで母を助けようとしているのだという著者さんの主張がすごく悲しかった
のでした。

▲先頭へ
8.月のしずく ★  文藝春秋  1997年10月30日発行  
大阪市立福島図書館

[目次]  月のしずく /聖夜の肖像 /銀色の雨 /琉璃想 /花や今宵 /
      ふくちゃんのジャック・ナイフ /ピエタ。
帯には、「信じて 愛して 奇蹟、ふたたび セピアに染まる街角に過ぎ去った
日々がよみがえる。はかなく哀しい出会い、そして旅だち。愛する人と、あなた
自身の物語−」と書かれておりました。

「月のしずく」は、三十年ちかくもコンビナートの荷役をして、その間に何ひとつ
変わりばえのなかった43歳・独身の佐藤辰夫の生活に、椿事が訪れるお話
です。ある夜、ベンツから放り出された銀座のホステスをしようがなく安アパート
に連れ帰ったのですが....。
「聖夜の肖像」は、なに不自由のない暮らしの中で、43歳になる島崎久子は、
20年もの間、パリで別れさせられた画家のことをずっと想い続けていたのです
が、イブの夜、表参道の街角で似顔絵画家と再会するお話です。

「銀色の雨」は、奨学金を受けて新聞販売店に勤める高校生・和也が、ある日、
挫折して女のアパートに転がりこみ、五人殺してきたヒットマンの雑用係になる
お話、「琉璃想」は、ワンマン経営者の紅林龍一が、生まれ故郷である北京の
下町に52年ぶりにカメラマンとともに訪れるお話、「花や今宵」は、30回目のバ
ースデーが最悪の一日となってしまった沢村真知子は、ヤケ酒を飲みすぎて終
電車で寝てしまい、あわてて山梨の無人駅に降りてしまいます。同じ電車から
降りた男とともに途方にくれ、しようがなく近くのモーテルに行くのですが...
.。月と桜と、ぶきっちょな天使に、30歳の誕生日を祝福してもらえた真知子が
幸せそうなお話なのでした。

「ふくちゃんのジャック・ナイフ」は、住み込み店員のふくちゃんと経営者の次男坊
の主人公との心あたたまるお話です。ふくちゃんは、一旗上げようとブラジルに
移民しようと決意して一生懸命お金を貯め、移民団に応募するのですが...。
「ピエタ」は、女性雑誌の副編集長をしている永井友子が、24年前捨てられた母
と再会するため、フィアンセとともにイタリアのローマに行くお話です。サン・ピエ
トロ大聖堂のミケランジェロの最高傑作とされるピエタ像もでてきて、素敵な作品
でした。

どの作品もそれぞれ味があって、いいんですね!! とくに、「月のしずく」「花や
今宵」「ピエタ」は、最高なのでした。浅田次郎ファンの方は、ぜひ借りてみてくだ
さいませ!

▲先頭へ
9.見知らぬ妻へ ★  光文社  1998年5月30日発行  
大阪市立福島図書館

[目次] 踊り子 /スターダスト・レヴュー /かくれんぼ /うたかた /迷惑
     な死体 /金の鎖 /ファイナル・ラック /見知らぬ妻へ

帯には、「愛しているから、別れるあなたへ。浅田次郎が魂を込めて贈る8つの
涙の物語」と書かれておりました。

「踊り子」は、父と母が離婚して、それぞれに別の家庭を持っているため、一人で
住んでいる高校生のコーちゃんが、新宿の歌舞伎町にあるサンダーバードという
踊り場で踊っていたナオミと知り合い、短い夏の恋をするお話、「スターダスト・
レヴュー」は、赤坂にあるスターダストというサパークラブでピアノを弾いている
飯村圭二が主人公です。芸大の同期である指揮者・小谷直樹の凱旋コンサート
で、本人と出会うところから話は始まります。主人公は小谷の妹と恋をし、そし
て、別れたのですが、小谷は心配して会いに来てくれるのですね。でも、本人
はチェリストの時の挫折した傷が癒えず、また、スターダストで....。

「かくれんぼ」は、主人公の英夫が、45歳になった今、悪夢をみるようになった
ことから話が始まります。主人公の奥さんである幼馴染の由美子、腐れ縁の
親友の武志と共に、小学校4年生の時のかくれんぼ事件(鬼であったハーフの
ジョージ少年が行方不明になった)の祟り?を清算するために、昔、かくれんぼ
をした<かえで山>へ行くお話です。
「うたかた」は、取り壊しの工事が始まる予定の団地で、一人淋しく死んでいっ
たばあさんのお話です。でも、このおばあさんは満開の桜を見下ろしながら、
息を引き取ったという感じのいい顔をして亡くなっているんですね。その顛末を
書いているお話なのでした。

「迷惑な死体」は、自分のアパートに他殺死体を置いていかれた主人公・加藤
良次が、チンピラを廃業して母と恋人のスミちゃんと郷里でラーメン屋をやるた
めに帰ろうとするお話です。「金の鎖」は、ファション・トップメーカーのエース・
デザイナーである主人公・千香子が、20年前に別れた恋人の生き写しの息子
に会うお話、「ファイナル・ラック」は、主人公の野崎一郎が、中山競馬場で、
四半世紀の間、通い続けたことを思い出しながら、ビギナーズ・ラックをつかん
だ中山でファイナル・ラックをつかんでみようと思うお話です。
「見知らぬ妻へ」は、会社を潰して自己破産し、離婚してしまい、今は歌舞伎町
で客引きをしている花田章が主人公です。その彼が手配師の土橋に、中国人
の李玲明と偽装結婚を依頼されます。そして、彼女とどういうわけか、一緒に
住み始めるのですが....。

著者さんは、辛くて哀しい境遇にいる人達にスポットを当てているお話を8編、
綴ってくれています。涙が出てきそうな物語ばかりなのですが、でも何故か私
は肩の荷が下りて、ほっとしてしまったのでした。とくに、私は、「スターダスト
・レビュー」「かくれんぼ」「うたかた」「見知らぬ妻へ」を大好きになったのでし
た。古き良き時代?を想い出しながら、読むには本当に最適な作品でした。

▲先頭へ
10.シェエラザード<上・下> ★★  講談社  
1999年12月6日発行  大阪市立図書館共有

カバーに、「豪華客船はなぜ沈められたのか。昭和20年、弥勒丸は嵐の台湾
海峡に沈んだ。2300人の命と金塊を積んだまま。総統の密使は喪われた恋人
たちに引き揚げを迫った。人間の誇りと勇気を問う長編、ついに刊行!」と書か
れておりました。

主人公は、元都市銀行支店長の軽部淳一です。もっとも本当の主人公は、『弥
勒丸』なのですが。彼は、宗英明という中国人から弥勒丸の引き揚げに協力し
て欲しいとの依頼を受け、同僚の元自衛隊幹部だった日比野義政と、元恋人
だった久光律子と、3人で調査を開始するのですが...。

「弥勒丸」は、1945年に台湾沖東シナ海で沈められた「阿波丸」のことだった
のですね。歴史に基づいて書かれているので、本当に読み応えのあるミステリ
ーなのでした。
なぜ、この2000人以上を乗せた「阿波丸」が、米潜水艦に沈められなければな
らなかったのか、いまだに不明なのですが、いったい何を積んでいたのでしょう
か? この作品では、アジア各地から集められた大量の『金塊』だったと想定さ
れていたのでした。そして、ストーリーは50年前の弥勒丸とシンガポールを、
また、引き揚げを巡って、暗躍の場と化した現在の東京を舞台に、弥勒丸は何
故沈められたのか?どうして航路をはずれたのか?をメインテーマにしながら、
物語は展開していったのでした。

ニコライ・リムスキー=コルサコフが、千夜一夜物語を念頭にいれながら作曲し
た交響組曲「シェエラザード」がタイトルになっているだけのことはある作品でし
た。

▲先頭へ
11.きんぴか1 三人の悪人編 ★★  光文社  
1998年9月30日発行  大阪市立福島図書館

[目次] 三人の悪党 /夢の砦 /闇のページェント /陽のあたる密室 /
      反戦参謀 /パパはデビル

カバーに、「坂口健太、通称ピスケン。伝説のヤクザ。敵対する組の親分を殺り、
十三年と六月と四日を刑務所で過ごす。大河原勲、通称軍曹。湾岸戦争への
自衛隊派兵に断固反対し、師団長の前で抗議のピストル自決・・・・未遂。広橋
秀彦、通称ヒデさん。収賄事件の罪を被り、仕えていた与党の大物議員に捨て
られた元政治家秘書。あまりにスケールが大きく、あまりにも個性的であったが
ゆえに、世間からはみ出してしまった男三人が、彼らを欺いた巨悪に逆襲をはじ
めた!情に厚く、侠気に溢れた男たちが疾走する、悪漢小説の金字塔」と書か
れておりました。

この三人の悪党?の面倒を見ているのが、定年を迎えた向井権左ェ門警部補な
んですが、彼をまじえて、四人がメチャクチャな大活劇を展開します。もっともお
話は読んでからのお楽しみなのですが....(ネタバレになってしまいますの
で)。
『きんぴか』は著者さんが初めて出版社から注文をいただいて世に出した小説
で、「幻のデビュー作」ということになるんだそうです。ですから彼の思い入れが
ひしひしと伝わってきて、私の大好きな『プリズンホテル』とは、また一味違った
面白さのある作品でした。

▲先頭へ
12.きんぴか2 血まみれのマリア編 ★★  光文社  
1998年10月30日
  大阪市立福島図書館
  

[目次] 嵐の夜の物語 /血まみれのマリア /クリスマス・ロンド /カイゼル
      髭の鬼/天使の休日
カバーに、「ピスケンが恋をした。お相手は、『血まみれのマリア』こと阿部まりあ。
泣く子も黙る救急救命センターの看護婦長で、今まさに息絶えんとする重体患者
を救うこと数知れずの、奇跡を呼ぶ女だ。あまりに意外な組み合わせに、驚きの
あまり絶句する軍曹とヒデさん。二人に構わず、一途で不器用なピスケンは、マ
リアのもとに通いつめる。はたして、この恋は実るのか!? 自衛隊が、極道が、
そして警察までもが彼らに振り回される! 命をかけて生きる、タフで純情な三
人組の眩しいほどにストレートな世直し稼業は終わらない。巨匠・浅田次郎の痛
快悪漢小説、佳境の第二巻!」と書かれておりました。

今回の主役は何といっても、「プリズンホテル冬」に登場している『血まみれのマ
リア』ですね。彼女は、この作品でデビューし、著者さんが惜しくなってプリズンホ
テルに再登場させたのだそうです。また、「クリスマス・ロンド」では、四代目天政
連合会若頭・田之倉五郎松が隠し持っていた5kgのヘロインの処分を巡ってのス
トーリー展開がとても面白かったのでした。

▲先頭へ
13.きんぴか3 真夜中の喝采編 ★  光文社  
1998年11月25日発行
  大阪市立福島図書館

[目次] 一杯のうどんかけ / 真夜中の喝采 /裏街の聖者 /チェスト!軍
      曹 /バイバイ・バディ
カバーに、「草壁明夫が殺された。広橋の器量に惚れ込み、彼をスケープ・ゴート
にした大物政治家・山内龍造の悪行を報道した、あの気鋭のジャーナリストが・・
・・。訃報を耳にした広橋は凍りつく。『あなたの伝記を書くことが私のライフワーク
だ』とまで言ってくれた男を、自分はひとりぼっちで死なせてしまったのだ・・・!!
ヤクザと悪徳政治家が自己弁護と保身に走るなか、正義の暴走を敢行するピス
ケンと軍曹。広橋も立ち上がる。草薙に伝え忘れたあのセリフを、口にするため
に!省みて、天に恥じる行いはただ一つもなし! ピスケン、軍曹、広橋の破天
荒な物語、ひとまず完結!」と書かれておりました。

「一杯のうどんかけ」は、町金殺しの借金王・瀬古半之助のお話、「真夜中の喝
采」は、射殺された草壁明夫の仇を討つため、軍曹が陸上自衛隊の106ミリ対
戦車反動砲を搭載した七三式ジープを盗み、ピスケンと一緒に殴り込みをかける
お話です。「裏街の聖者」は、歌舞伎町の路地裏の診療所の医師・尾形清のお
話、「チェスト!軍曹」は、軍曹が勇猛無比の薩摩郷士の村である故郷に里帰り
するお話、「バイバイ・バディ」は、四代目天政連合会総長・新見源太郎が、天政
の五代目を指名するお話です。
とくに、「チェスト!軍曹」はヒッチャカメッチャカでありまして、こういう家庭に生ま
れなくて良かったと思ってしまったのでした。

▲先頭へ
14.地下鉄に乗って ★★★  吉川英治文学新人賞受賞作
徳間文庫  1997年6月15日発行  大阪市立中央図書館

紹介文には、「すべての地下鉄通勤者に捧ぐ!愛と死、そして魂の再生へ。
戦後の地下鉄を舞台に感動の冒険ファンタジー。永田町の地下鉄駅の階段を上
がると、そこは三十年前の風景。ワンマンな父に反発し自殺した兄が現われた。
さらに満州に出征する父を目撃し、また戦後闇市で精力的に商いに励む父に出
会う。だが封印された『過去』に行ったため...。思わず涙がこぼれ落ちる感動
の浅田ワールド」と書かれておりました。

この作品は、1994年3月に徳間書店より発刊されています。
ずっとこの作品を読みたくてしようがなかったのですが、いつも本棚にはないの
で諦めていたのですが、一昨日中央図書館の棚にあったのですね、びっくりしま
した。
さて、この作品は登場人物の描写がすごいのですね。主人公の慎次、恋人の
みち子、アムール(父親の若い頃のあだ名)、お時(父親の恋人)さん達が、私
の前に現われているような感じがして、浅田ワールドに完全に引き込まれてし
まいました。ラストシーンでは、みち子さんがあまりにも可哀想で、私は泣いて
しまいました。でも、最後に主人公が、「そうだ。メトロに乗って行こう」と誓って、
元気に歩き出すシーンは最高だったのでした。

「解説」のところで、馳星周氏が「仕事に倦み、家族の葛藤を抱え、人生にくたび
れきった中年サラリーマンが体験するタイム・トリップの物語。主人公は過去と
現在を行き来しながら、憎み軽蔑していた父を理解し、愛するものを失い、それ
でもなお、自分の意思と足でこれからも生きていくことを確認する」と書かれてい
た言葉もとても素敵でした。素晴らしい読後感を味わいたい方はぜひ借りてみて
くださいませ!!
なお、『音楽座ミュージカル』さんのHPの中に、浅田次郎氏の『原作者からの祝
福!』のページが開設されていますので、こちらもお立ち寄りくださいませ!!

▲先頭へ
15.日輪の遺産 ★★  講談社文庫  1997年7月15日発行  
大阪市立福島図書館
 

裏表紙に、「帝国陸軍がマッカーサーより奪い、終戦直前に隠したという時価二
百兆円の財宝。老人が遺した手帳に隠された驚くべき真実が、五十年たった今
、明らかにされようとしている。財宝に関わり生きて死んでいった人々の姿に涙
する感動の力作。ベストセラー「蒼穹の昴」の原点、幻の近代史ミステリー待望
の文庫化。」と書かれておりました。

「消えたマッカーサーの財宝」という副題が単行本には付いていたので、宝探し
の物語のように感じられた方も多いと思いますが、なかなかどうして浅田次郎
ならではの作品なのですね。
特に後半からの展開はすごいものがあり、涙なくして読むことができないと感じ
ました。戦後の日本の繁栄の陰には、死んでいった少女たちの守護があった
からに違いないと勝手に思い込みながら読んでいたのでした。たかが小説、さ
れど小説なんですね。この作品を読んでいると、今の日本人は何をやっている
んだろうと急に腹が立ってきたのでした。

▲先頭へ
16.天切り松 闇がたり ★★★  徳間書店  
1996年7月31日発行  大阪市立福島図書館

[目次] 第一夜 闇の花道 /第二夜 槍の小輔 /第三夜 百万石の甍 
     /第四夜 白縫華魁 /第五夜 衣紋坂から。

帯には、「今世紀最高のピカレスク文学 伝説の大泥棒が追憶する愛と涙の
裏稼業!」と書かれておりました。

[あらすじ] 天切り松が、留置場で「闇がたり」という不思議な語り(低く、抑揚
のない六尺四方から先は届かないという夜盗の声音)で皆に聞かせる哀しい
お話です。
「闇の花道」は、天切り松こと、松蔵が12歳の時に、抜弁天の安吉親分の元に
売られるところから始まります。安吉親分は、都内2000人の泥棒を仕切ってい
るお人なのです。「槍の小輔」は、ゲンノマエ(帯にはさんだ紙入れを、真正面か
ら抜き取る芸当)のおこん姉御が、元老山県有朋の明治天皇恩賜の金時計を掏
り取り、山県有朋と同居して、最後に宝物の槍をいただくお話、「百万石の甍」は
、安吉親分の子分の黄不動の栄治(天切り松の師匠で、屋根に登って瓦をおっ
ぱずし、天井裏から棟木づたいに忍び込む職人芸の達人)のお話、「白縫華魁」
は、松蔵の姉のおさよが博奕ぐるいの父親に、吉原に売られるお話です。
「衣紋坂から」は、松蔵が姉のおさよに再会し、説教強盗の寅弥兄貴に姉を身請
けしてもらうのですが....。

とても哀しい物語なので、私は「衣紋坂から」のところで泣いてしまいました。
「いい年をしたオッサンが」と思われても、弁解のしようがないのですが...。
この作品を読んでいて、こういう不幸な時代が二度と来ないように願わないでは
おれなくなってしまいました。とても素晴らしい作品ですので、皆様もぜひ読んで
みて下さいませ!!

▲先頭へ
17.天切り松 闇がたり 第二巻 残侠 ★★  集英社
1999年9月21日発行  大阪市立福島図書館

集英社さんのHPの内容紹介に、「母を死に追いやり、姉を女衒に売った父の供
養なんてできない」少年・天切り松は声を絞る・・・『春のかたみに』等、裏家業
の世界に生きる人間たちが、意地と見栄に命をかける大正ピカレスロマン。」と
書かれておりました。

[目次] 第一夜 残侠 /第二夜 切れ緒の草鞋 /第三夜 目細の安吉 /
第四夜 百面相の恋 /第五夜 花と錨 /第六夜 黄不動見参 /第七夜
星の契り /第八夜 春のかたみに。

「残侠」は、清水一家四天王のひとりである小政が大正十一年のモダン東京に
生きて姿を現したお話、「切れ緒の草鞋」は、「残侠」の続きでありまして、小政
が一宿一飯の義理を立てるお話、「目細の安吉」は、安吉親分が警視総監の
岡喜七郎閣下を中抜き(その場できっちり半分だけ抜きとって、財布はもとの懐
に返す半返しをした)をかけたお話です。

「百面相の恋」は、安吉一味の金庫番を務める百面相の本多常次郎が、二千円
もの籠脱という詐欺をかけるお話、「花と錨」は、振袖おこん姐さんが、海軍中尉
に惚れられるお話、「黄不動見参」は、黄不動の栄治が、お屋敷の天板をぶち抜
いて忍びこむてえ夜盗の荒芸である天切りの技を、松に教えながら、夜盗の極
意・息合わせを披露するお話です。

「星の契り」は、いつまでもぐずぐずと死んだ姉を忘れられずにいる松のために、
筆おろしと、松がひとめ惚れした初菊の水揚げを一緒くたにやっちまうお話、「春
のかたみに」は、野宿場の土管の中でくたばるまで女房の骨を抱いていた父と
母の骨箱を抱いて、懸命に供養するお話です。

やっぱり「天切り松 闇がたり」シリーズは本当に最高なのでした。最後の二編
では、情けないことに、またまた泣いてしまいました。満開の桜の絢爛が目に浮
かんできた素晴らしい作品でした。

▲先頭へ
18.壬生義士伝<上・下> ★★★  文藝春秋
2000年4月30日発行  大阪市立東成図書館

上巻の帯に、「『死にたぐねえから人を斬るのす』 壬生浪と呼ばれた新撰組に
あってただひとり『義』を貫いた吉村貫一郎の生涯。構想二十年、著者初の時
代小説。浅田版『新撰組』遂に刊行! 旧幕府軍の敗退がほぼ決した鳥羽伏
見の戦い。大坂城からはすでに火の手が上がっていた。そんな夜更けに、満身
創痍の侍、吉村貫一郎が北浜の南部藩蔵屋敷にたどり着いた。脱藩し、新撰
組隊士となった吉村に手を差し伸べるものはいない。旧友、大野次郎右衛門は
冷酷に切腹を命じる−。斎藤一、稗田利八ら維新を生き延びた新撰組関係者に
よって語られる非業の隊士、吉村貫一郎の生涯は、涙なしには語れないものだ
った。」、また、下巻の帯には、「『泣げ。さほどにこらえておったのじゃろう』切腹
を命ぜられた男は父の声を聞いた。非業の死を遂げた男たちの祈りは、かなえ
られるのか。日本人の『義』を問う感動巨篇! わしは脱藩者にてござんす。生
きんがために主家を捨て、妻子に背を向け、あげくには狼となり果てて錦旗にす
ら弓引く不埒者にござんす。したどもわしは、おのれの道が不実であるとは、ど
うしても思えながった。それともおのれらは、貧と賤とを悪と呼ばわるか。富と貴
とを、善なりと唱えなさるのか。吉村貫一郎が生涯をかけて貫き通した『義』とは
いったい何なのか。切腹を命じた大野次郎右衛門の真意とは・・・・。感動の結
末へと物語は進む。」と書かれておりました。

浅田ワールドの新撰組は一味違うのですね。お話は、実在の人物である非業
の隊士・吉村貫一郎の生き様を、本人の回想部分と、新聞記者?が桜庭弥之
介、池田七三郎、斎藤一ら、新撰組の生き残った人たちから、取材するという部
分から構成されていました。

「義の本領は正義にあり、義を一度喪失すれば、人心荒廃し、国が滅びる」とい
う著者さんの憂いがひしひしと伝わってくる作品でした。また、主人公の長男で
ある嘉一郎の、死に際での母への手紙のところでは、またまた泣いてしまった
のでした。
吉村貫一郎が藩校での講義の締めくくりに唱和させていた陶潜の詩「人生根て
いなく、飄として佰上の塵の如し。盛年重ねて来らず、一日再び晨なり難し、時
に及んで当に勉励すべし、歳月は人を待たず。」が、心にずしりと響いてきた作
品でした。

▲先頭へ
19.姫椿 ★  文藝春秋  2001年1月30日発行
大阪市立福島図書館

[目次] シエ(xi'e) 姫椿 再会 マダムの喉仏 トラブル・メーカー オリンポス
の聖女 零下の災厄 永遠の緑。

紹介文に、「ペットに死なれた独身OL、不況で自殺を考える経営者、妻に先立
たれた大学教師・・・凍てついた心を抱える人々に、救いの手はさしのべられる
のか。冬の公園の日溜りにも似た微かな温もり。魂をゆさぶる八篇」と書かれて
おりました。

「シエ」は、伝説の麒麟の顔を持ち、立派な鹿の角を生やし、虎の尾と牛の足を
持った神の獣が主人公のお話、「姫椿」は、バブル崩壊で経営が行き詰まり、自
殺を考える不動産会社社長がふと立ち寄った銭湯でのお話、「再会」は、銀座の
クラブで三十年ぶりに偶然出会った友人から聞かされた忌まわしいお話です。

「マダムの喉仏」は、完璧な女を演じ続け、亡くなった老舗のオカマバー『銀花』
の名物ママの秘話、「トラブル・メーカー」は、オーストラリア行きの飛行機で隣り
合わせた男性の哀しいトラブル話、「オリンポスの聖女」は、オリンピックが行わ
れているシドニーで、三十年前に別れてしまった女性と偶然出会うお話、「零下
の災厄」は、著者さん担当の編集者が巻き込まれた『事実は小説より奇なり』な
お話、「永遠の緑」は、定年退官を二年後に控えた国立大学助教授・牧野公徳
博士の唯一の楽しみである競馬場通いのお話です。

著者さんらしい庶民の目線から描かれた哀しい物語が多いのですが、読んでい
て何故か気が楽になってくるのですね。そんなに突っ張っらないで、肩の力を抜
いて...と諭されているような気がして・・・・。
なお、この本は、「都市の中で起こる不思議なことがらをテーマに書いてみませ
んか」という編集者のオファーがきっかけとなった作品だそうでありまして、浅田
次郎氏ならではの世界が広がっていたのでした。

▲先頭へ
20.薔薇盗人 ★  新潮社  2000年8月25日発行
大阪市立福島図書館

[目次] あじさい心中 死に賃 奈落 佳人 ひなまつり 薔薇盗人。

帯に、「愛は裏切り。涙は罪作り。背徳と涙の花園に、ようこそ。魂を揺さぶる6つ
の感動。親愛なるダディ。報告しなければならない出来事があります−。少年か
ら船乗りの父へ宛てた手紙形式で魅せる『薔薇盗人』。リストラされたカメラマン
と、場末の温泉場で出会った中年女との交情が哀切な『あじさい心中』。技巧が
光る『死に賃』『奈落』『ひなまつり』。短編の第一人者が贈る6つの感動。」と書
かれておりました。

「あじさい心中」は、大手出版社の写真室長・北村がリストラ退職して三か月後、
温泉街の場末のストリップ小屋で中年の踊り子と知り合いになるお話、「死に賃
」は、主人公が冥土に送った親友に、「もし仮に、死ぬときの苦痛からいっさいま
ぬがれるとしたら、君はいくら払うね−」と聞かれたのを思い出したお話です。

「奈落」は、エレベーターの外扉が開き、誤って転落死した庶務課課長代理が巻
き起こす奈落の底のお話、「佳人」は、部長に昇進した主人公が、同居している
母から、また、職場の部下のために、お嫁さん紹介の話を持ち出されるのですが
....。
「ひなまつり」は、母と安アパートに住む小学6年生の少女が、ひなまつりの頃に
体験した哀しい出来事のお話、「薔薇盗人」は、外国航路の船長を父に持つ少
年の初恋と家の近所で起こった薔薇泥棒のお話です。

「奈落」は、怖い話なんですね、思い当たることが過去にあったような気がして、
夢の中に、「落ちる・・・落ちる・・・落ちる」と叫ぶシーンが出てこなければいいの
ですが....。
全体的に今までの短編集とは一味違った作品が多いようでありまして、違和感
を少し感じてしまいました。やっぱり、庶民の心に直接響いてくるような、家族の
の温かみや哀しみを綴った作品集の方がお気に入りなのでした。

▲先頭へ
21.蒼穹の昴<上・下> ★★★  講談社
1996年4月18日発行  大阪市立福島図書館

帯に、「新生面をひらく特別書下ろし超大作! この物語を書くために私は作家
になった。汝は必ずや西太后の財宝をことごとく手中におさむるであろう−。中
国清朝末期、貧しい農民の少年・春児は占い師の予言を信じて宦官になろうと
決意した。愛と権力のドラマ、頂点に。魂をうつ歴史超大作! 落日の清朝には
領土を分割せんと狙う列強の牙が迫っていた。科挙進士の友とも別れ、西太后
の側近となった宦官の春児は、野望渦巻く紫禁城で権力をつかんでいった。」
と書かれておりました。

この壮大な歴史小説に圧倒されてしまいました。西太后、李鴻章、光緒帝、袁
世凱、康有為、伊藤博文などの歴史上の人物が続々登場し、最後には毛沢東
も....。とかく評判の悪い鬼女・西太后が、とても素敵な女性として描かれて
いたのも興味深かったのでした。

男を捨てて、何もかも捨ててきたはずなのに、人間の誇りを持ち続けた春児を、
そして、春児の妹・玲玲をとても可愛く切なく描いているところに、著者さんの
真骨頂や、この作品に対する熱き思いが、しっかりと詰まっていたように感じた
傑作でした。

▲先頭へ

上に戻るへリンク