| 日本文学6(ミステリ・エッセイ) |
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| [目次] 171.午前三時のルースター (垣根涼介著) 172.千里眼 ミドリの猿 (松岡圭祐著) 173.千里眼 運命の暗示 (松岡圭祐著) 174.亡国のイージス (福井晴敏著) 175.ストロボ (真保裕一著) 176.後催眠 (松岡圭祐著) 177.悪意 (東野圭吾著) 178.DZ ディーズィー (小笠原慧著) 179.遥都 渾沌出現 (柴田よしき著) 180.皆月 (花村萬月著) 181.誰にでもできる恋愛 (村上 龍著) 182.李歐 (高村 薫著) 183.死霊婚 (和田はつ子著) 184.マークスの山 (高村 薫著) 185.M1[エム・ワン] (池井戸 潤著) 186.恐怖の骨 (和田はつ子著) 187.果つる底なき (池井戸 潤著) 188.凍える牙 (乃南アサ著) 189.落伍せし者 (小杉健治著) 190.拳鬼伝 (今野 敏著) 191.青狼記 (楡 周平著) 192.カムナビ<上・下> (梅原克文著) 193.予知夢 (東野圭吾著) 194.脳男 (首藤瓜於著) 195.薬師 (和田はつ子著) 196.種の復活 (北上秋彦著) 197.ビタミンF (重松 清著) 198.神の柩 (本岡 類著) 199.かくし念仏 (和田はつ子著) 200.羊ゲーム (本岡 類著) |
| (順に、本名・著者名・出版社・発行日・蔵書先 なお、敬称は略させていただきます) 評価は無印から★★★まで4段階、★2つ以上が借り得本です。 |
| 171.午前三時のルースター ★ 垣根涼介著 文藝春秋 2000年4月30日発行 大阪市立大正図書館 |
帯に、「第17回サントリーミステリー大賞・読書賞ダブル受賞作 旅行代理店勤務 のおれは失踪した父親を探す少年に同行し、ベトナムを訪れる。現地でおれたちが 知った切ない真実とは・・・・。」と書かれておりました。 主人公の長瀬が、四年前にベトナムで失踪した父親を探しに行く高校生・慎一郎、 長瀬の友人で、テレビ局をやめたばかりの源内とともベトナムに旅立ちます。そして 、サイゴン(現ホー・チ・ミン市)で、タクシードライバーのビエンと、語学が得意な コールガール・メイの協力を得ながら、彼らは捜索を開始するのですが....。 とても爽やかな小説なんですね! テンポもいいし、スピード感もあるし、読後感も 良くて、肩の凝らない読物としては最適でした。でも、極悪非道の悪人は登場しな いし、ハードボイルド作品でもないので、文部省推薦本のような感じがして、ちょっ とストレス解消には向いていないのが残念でした。 先頭へ |
| 172.千里眼 ミドリの猿 ★★ 松岡圭祐著 小学館 2000年3月20日発行 大阪市立福島図書館 |
カバーに、「嵯峨敏也は悪夢にうなされていた・・・・。多重人格と判断した入絵由 香の恐るべき夜叉の顔をまのあたりにしたからだ。ミドリの猿、その言葉の真意は ?嵯峨はかつての恩師、倉石を連続変死事件の犯人と疑い極秘調査に乗り出し た。一方、いまや『千里眼』の異名をとるに至った岬美由紀は、見えざる敵の存在 を察知する。メフィスト・コンサルティング−史上最大のマインドコントロール組織が ついに姿を現したのだ! 小説・映画と複雑にクロスオーヴァーするメディアミック ス人気シリーズ『千里眼』三部作、波乱の第二作!」と書かれておりました。 千里眼の続編です。主人公は勿論、岬美由紀。元自衛官で、今は政府付きカウン セラーなのですね。ODA視察のため、アフリカの小国・ジフタニア共和国に行きま す。そして、そこでの人道的?行動が原因で、またもや謹慎処分になってしまうの ですが....。 中国と戦争に突入してしまうそうになる設定がいいですね。アクションたっぷり、ス ピード感いっぱいで、ストレス解消に最適な冒険小説でした。それにしても、「ミドリ の猿」の正体が気になってしようがなくなってしまいました。精神衛生上、よろしくあ りませんので、完結編の「千里眼 運命の暗示」も併せてお借りになった方がいい と感じました。 昔、読んだ門田泰明氏の「黒豹シリーズ」の主人公・黒木豹介を思わず思い出して しまったスーパーヒーロー・美由紀でした。 先頭へ |
| 173.千里眼 運命の暗示 ★★ 松岡圭祐著 小学館 2001年1月1日発行 大阪市立福島図書館 |
カバーに、「捕らえた岬美由紀を救いだすため、嵯峨敏也と蒲生誠は東京湾唯一 の無人島・猿島に向かう。しかしそこには既に、メフィスト・コンサルティングの罠が 張り巡らされていた。中国15億人を一斉に操り日本侵攻に向かわせるメフィストの 集団マインドコントロールのからくりとは? 残された猶予はわずか24時間。そこに はオカルトや超常現象ではない、科学的“催眠暗示”の巧妙なトリックが隠されて いた−。岬美由紀と友理佐知子、ふたりの運命の行方は? 『催眠』の入絵由香 が見たミドリの猿の正体とは? そして日本を襲う未曾有の危機の結末は? 圧 倒的な迫力と面白さ、リーダービリティとオリジナルティを誇る超娯楽エンターテイ ンメント3部作、遂にここに完結!」と書かれておりました。 千里眼シリーズ完結編です。クライマックスシーンが衝撃的でした。また、中国・昆 明市にある“玉皇殿”の“玉皇頂”に立っている美由紀の姿が目に見えるような描 写には圧倒されてしまいました。そして、最後には「ミドリの猿」の正体がやっと明 かされるのですが....。 テンポが良くて、愛と感動の場面もあって、抜群の読後感を持つ素晴らしいエンタ ーテイメント小説でした。貴方も、臨床心理学のプロが描く「サイコ・サスペンスの 世界」に足を踏み入れて見ませんか!? 先頭へ |
| 174.亡国のイージス ★★ 福井晴敏著 講談社 2000年5月24日発行 大阪市立福島図書館 |
紹介文に、「自らの掟に従い、15歳で父親を手にかけた少年。一人息子を国家に 惨殺され、それまでの人生をなげうち鬼となった男。祖国に絶望して叛逆の牙を むく、孤独な北朝鮮工作員。男たちの底深い情念が最新のシステム護衛艦を暴 走させ、一億二千万の民を擁する国家がなす術もなく立ちつくす。圧倒的筆力が 描き出す、慟哭する魂の航路。」と書かれておりました。 さて、この作品の二人の主人公(海上自衛隊ミサイル護衛艦<いそかぜ>の先 任警衛海曹<先任伍長>48歳・仙石恒史と、第一分隊砲雷科一等海士・21歳・ 如月行)が最高なんですね。究極のデコボコ・コンビが大活躍してくれていますし、 また、北朝鮮・日米問題などにもしっかり触れてくれていて、考えされられる記述 もありました。1800枚にも及ぶ大作にもかかわらず、一気に読める本に仕上がっ ているのにはびっくりしました。 推理作家協会賞、冒険作家クラブ賞、大藪春彦賞などを受賞されただけのことは ある傑作だと強く感じました。結末も素敵でしたし、読後感も良かった超娯楽大作 なのでした。 先頭へ |
| 175.ストロボ ★★ 真保裕一著 新潮社 2000年4月20日発行 大阪市立福島図書館 |
[目次] 第五章 遺影・・・五十歳 /第四章 暗室・・・四十二歳 / 第三章 ストロボ・・・三十七歳 /第二章 一瞬・・・三十一歳 / 第一章 卒業写真・・・二十二歳 帯に、「キャリアも積んだ。名声も得た。だが、俺に何が残されたというのか−。 過ぎ去った時、遠い出会い、苦い別れ。女流写真家と暗室で愛を交わした40代、 先輩を凌駕しつつも、若手の台頭に焦りを抱いた30代、病床の少女を撮って飛躍 した20代、そして学生時代を卒業した、あの日。時間のフィルムを巻き戻し、人生 の光と影をあぶりだす名編。」と書かれておりました。 「遺影」は、スタジオを構えて12年になるフリーカメラマン・喜多川光司が、個人的 に写真を撮って欲しいと若い女性から依頼されるお話、「暗室」は、主人公のスタ ジオに一年間在籍していた女性カメラマン・平石晴美が、ヒマラヤのマナスル登山 隊と一緒に遭難してしまうお話です。 「ストロボ」は、かつて、ステージ撮影やファッションまで、女を撮らせたら天下一品 といわれた黒部勝人と再会するお話、「一瞬」は、契約カメラマンとして大手出版 社に在籍していた頃に撮った一枚の写真のお話、「卒業写真」は、写真学科の学 生でありながら、スタジオマンとしてアルバイトに奔走していた頃、突然、友人名 で小包が送られてきたお話です。 久しぶりに著者さんらしい手応えのある作品を読むことができて、とても嬉しかっ たのでした。「奪取」、「ホワイトアウト」が素晴らしすぎたせいか、最近の作品から は少し精彩がなくなったように感じていたのですが、ところがどっこい健在なんで すね!! 「遺影」、「暗室」、「一瞬」を読んでいて、目頭が熱くなってしまって、 困ってしまいました。一枚の写真に賭けるカメラマンの意気込みや、一枚の写真 の重みがひしひしと伝わってくる素晴らしい短編集でした。でも、写真を撮る時は、 撮る側の人間性が表れるそうですので、くれぐれもご注意くださいませ!? 先頭へ |
| 176.後催眠 ★ 松岡圭祐著 小学館 2000年10月20日発行 大阪市立福島図書館 |
紹介文に、「嵯峨敏也は謎の女からの電話を受けた。嵯峨にとって、かつて催眠 療法の教師でもあった精神科医・深崎透の失踪を、木村絵美子という患者に伝え ろ。女の声は一方的にそう指示し、電話は切れた。癌に冒され、余命いくばくもな い深崎と、絵美子のあいだに芽生えた医師と患者の垣根を越えた愛。だがそこに は驚くべき真実が隠されていた−。『催眠』を遥かに凌ぐ感動、異色にして胸を打 つラブストーリー。リアリズムとファンタジーの狭間に位置する松岡ワールド最高傑 作。」と書かれておりました。 最高傑作と紹介されていたので、大きな期待を持って読み始めたのですが、残念 ながらそうではなかったのではと感じてしまいました。エンターテイメント作品だっ た「千里眼」の世界とは違って、歪んでしまっている社会が舞台だったのですが、 悪役たちが陰湿に描かれていたのが少し気になりました。 でも、「神経症」に正面から焦点をあて、感動のヒューマンドラマに仕立て上げてい るのはさすがでした。 先頭へ |
| 177.悪意 ★★ 東野圭吾著 講談社ノベルス 2000年1月5日発行 大阪市立福島図書館 |
カバーに、「人気作家が仕事場で絞殺された。第一発見者はその妻と昔からの友 人。逮捕された犯人が決して語らない動機にはたして『悪意』は存在するのか。」 と書かれておりました。 中学校で教諭だった犯人の同僚だった加賀刑事の執念の捜査が見事なのです ね。犯人に何度も翻弄されながらも、最後には中学時代のいじめ事件を調査し始 め、ついにその動機にたどり着いたのでした。 この物語は、犯人・児童文学作家の野々口修と加賀刑事の手記という形をとりな がら進んでいきます。途中から完全に引き込まれてしまって、夜更けまで読んでし まって、睡眠不足になってしまいました。醜い偏見と逆恨みが如何に怖いもので あるかを痛感させられた作品でもありました。 先頭へ |
| 178.DZ ディーズィー ★ 小笠原慧著 角川書店 2000年5月10日発行 大阪市立福島図書館 |
帯に、「異常なまでに発展した文明とテクノロジーの中で、人間は500万年前と変 わらないひ弱な心のままで生きている。しかし、もう、無理だ。人類が選ぶ最後の 手段がここにある。ヴェトナム難民船より救出された妊婦から生まれた二卵性双 生児(DZ)の兄妹が背負う宿命を、ハリウッド映画のような壮大なストーリーで描 き上げたヒューマン・ミステリ。2000年度横溝正史賞正賞受賞作。」と書かれてお りました。 精神科医である著者さんならではの世界が舞台でありまして、難解な専門用語 や科学用語がたくさん出てきて面食らったのですが、途中から面白くなってきて、 完全に引き込まれてしまいました。でも、最近のエンターテイメント小説はどうして こんなに難解な言葉がいっぱい登場するのでしょうか。 主人公?の若い医師・志度涼子が非常に魅力的に、そして、元警部・スネルの執 念の捜査がうまく描かれていたのが印象的でした。でも、結末が出来過ぎのよう ですし、ここまで偶然が重なるのもちょっと気になったのですが...。 新しい種の孤独をテーマに描いた、横溝正史賞正賞受賞作だけのことはある作 品でした。 先頭へ |
| 179.遥都 渾沌出現 ★★ 柴田よしき著 徳間書店 1999年3月31日発行 大阪市立福島図書館 |
カバーに、「大地震と、人の生き血を吸う妖怪たち。十万人を越える死者が出た京 都大災害の1年半後には、琵琶湖の湖底からホタルに似た巨大昆虫が人々を襲 い、テニアン島が空を飛んで、京都上空に浮かんでいる。いまや町は危機管理委 員会の支配下にあった。黒き神々の手先はあらゆる機関に入り込んでいる。未曾 有の災厄に立ち向かい、いったん死んだものの、貴船神社の龍神から、命を授か った地質調査技師の木梨香流は恋人の真行寺君之とともに、時空の裂け目にあ る闇の牢獄に部屋ごと封じ込められていた。大異変が始まった・・・・!?」と書か れておりました。 「炎都」、「禍都」に続く三作目です。この作品でも、主人公の香流と君之たちが、 清明の札を持つ藤島美枝、警部補の村雨祐馬、アルルの謎文字研究者の十文 字雄斗、ゲッコー族首長でヤモリの姿をしている珠星と蒼星、老獪な天狗・三善 たちといった強力な脇役陣たちとともに大活躍してくれています。 「壮大な宇宙の叙事詩から息を飲む大異変のスペクタクルシーンへ畳みかける筆 力は並大抵のものではない」と紹介されている通り、ストレス解消・気分転換には もってこいのエンターテイメント小説でした。 先頭へ |
| 180.皆月 ★ 花村萬月著 講談社 1997年2月20日発行 大阪市立福島図書館 |
帯に、「どん底に落ちた中年の再生物語。ある日突然、大金を持って妻が逃げた !男を救うのは、ヤクザ者の義弟とソープ嬢。著者の新境地を示す長編小説。諏 訪徳雄はコンピュータおたくのさえない40男。ある日突然、妻の沙夜子がコツコツ 貯めた1000万円の貯金とともに蒸発してしまう。徳雄は会社をやめ、ゲイの男と ケンカして、前歯まで失ってしまう。ボロボロになった男に救いの手をさしのべるの は・・・」と書かれておりました。 普通の中年のオッサンが、あるキッカケでどんどん落ちて、どんどん変わって成長 ?していく過程を本当にうまく描いているんですね、びっくりしました。著者さんの 作品は、どん底に落ちた人間やみじめで哀れな人間を、浅田次郎氏とはまた一味 違った視点から、温かく捉えてくれていたように感じました。一見、暴力とセックス だけの世界なのに、人生の哀しみや喜びがズシリと伝わってくる素敵な本でした。 題名になっている「皆月」には深い意味があるのですね。主人公の妻・沙夜子の セリフ、「−わたしも、あなたも、アキラも、あのころわたしのまわりにいた人間は、 みんなお月様だった。自分では光ることができず、他人の光を反射するのがやっと 」、そして主人公のセリフ、「やはり皆・・・・月か」の箇所がとても印象に残ったの ですが....。さて、貴女はどうお感じになられたでしょうか!? 先頭へ |
| 181.誰にでもできる恋愛 ★★ 村上 龍著 幻冬舎文庫 2001年4月25日発行 大阪市立福島図書館 |
[目次] 本当の恋愛ができる人間の資格 結婚がうらやましくない時代 自立し ていない人間に恋愛はできない 男をダメにする女から女をダメにする男へ 寂し さから自由になれるただ一つの方法 どんな恋の失敗も責任は半分ずつ 尽くす より甘えないこと 新階級社会での恋愛の新しいかたち 人生を早々と捨てた女 の子たちの理由 演歌のような恋はやめてください 家庭の団欒の嘘と男たち 役割が一つしかない女は疲れる 『なぜあんな男を好きになったのか』 『感動の ない女』の行く末 恋愛をあきらめないための選択肢 自立していない男がきちん と不幸になっていく 本質的な寂しさからどう抜け出すか あなたにしか探せない もの 社会的評価をどう受けとめるか 『女は弱いから』がもっとも女を不幸にする 男が無謀なことをする真理 共通した『女の生き方』なんてない 地球が終わると き。 カバーに、「女性はこれからどうすればいいのか?すべての女性に共通した答え はない。あなたの訓練の度合いと、あなたの容姿で、回答はまったく違ったもの になる(本文より)。崩壊同然の旧い社会システムに頼らない生き方の先に、充実 した人生を過し、楽しい恋愛を経験するあなたがいる。素敵な未来を迎えるあなた のための28章。村上龍の驚きの恋愛論。」と書かれておりました。 この本では、連載雑誌『SAY』の読者相談コーナーの電話恋愛相談のお話から、 社会や世間、国家、歴史、バブル崩壊、経済、政治分野まで非常に広範囲にわ たって、恋愛論を展開してくれています。でも、とても暗い内容になっていたので、 読んでいて疲れてしまいました。 「結論から言うと、誰にでもできる恋愛などというものはありません。男も女も同じ です。リスクを負える人間、つまり自立した男女にしか恋愛をする資格はないわけ です。」との著者さんの主張が、非常に哀しく、そして寂しく感じられたのでした。 なお、この作品は2000年2月青春出版社より刊行されたものだそうです。 先頭へ |
| 182.李歐 ★★ 高村 薫著 講談社文庫 1999年2月15日発行 大阪市立福島図書館 |
カバーに、「惚れたって言えよ−。美貌の殺し屋は言った。その名は李歐。平凡な アルバイト学生だった吉田一彰は、その日、運命に出会った。ともに二十二歳。し かし、二人が見た大陸の夢は遠く厳しく、十五年の月日が二つの魂をひきさいた。 『わが手に拳銃を』を下敷にしてあらたに書き下ろす美しく壮大な青春の物語。」 と書かれておりました。 この作品は、1992年3月、講談社より刊行された『わが手に拳銃を』を下敷きにあ らたに書き下ろされたものだそうです。六歳の時に、離婚した母に連れられて大阪 にやってきて、その母親に駆け落ちされ、祖父母のもとで育ちながら、運送会社と ナイトクラブのボーイをしながら国立大学に通っている主人公が、ある日、殺し屋に 出会うことから話は始まります。舞台が大阪で、おまけに知っている場所がいっぱ い出てくるので、思わず感激してしまいました。いつのまにか主人公になりきって しまった素晴らしい作品でした。 先頭へ |
| 183.死霊婚 ★★ 和田はつ子著 光文社 1999年11月25日発行 大阪市立福島図書館 |
カバーに、「新宿御苑の桜の樹の下から、盲導犬が白骨死体を掘り出した。警視 庁捜査一課の須原透刑事の通報で、慶和大学法医学教室の田代ゆり子が検死 。死後三年の若い女性だが、白骨には赤い色素ヘンナが不気味に浮き出ていた 。数日後、ゆり子は奥多摩湖で顔面だけ白骨化した若い女性の水死体に遭遇、 ついで、明治神宮・菖蒲園でまたも若い女の絞殺死体が・・・・その顔面には、生 体反応のある切り込みがあった。三体の異常な死体が意味するものは? ゆり子 に仕掛けられる身の毛もよだつ猟奇の罠・・・・。その陥穽に落ち込んだとき、彼女 は真相を悟った! サイコホラーミステリーの名手が放つ異常犯罪傑作!」と書か れておりました。 主人公・慶和大学法医学教室に勤めている田代ゆり子が事件を通して、成長して ゆく姿がうまく描かれています。そして、美容外科(アロマテラピーやケミカルピー リング)から、冥界婚(死霊結婚)につきものの人形奉納の儀式のお話まで登場し てくるのでした。それにしても、影の主人公である文化人類学者で女子大の助教 授・日下部遼があまりにもカッコよかったのが印象的でした。 この著者さんは、独特の雰囲気を持っておられるので感心しました。おまけに「冥 界婚の世界」を描いてくれているのですから、尚更です。おそらく、民俗的なミステ リーの分野に含まれるのではと思いますが、坂東眞砂子さんの土着・土俗的世界 とは、また一味違った世界なのでした。 先頭へ |
| 184.マークスの山 ★★ 高村 薫著 早川書房 1993年3月31日発行 大阪市立福島図書館 |
カバーに、「昭和51年南アルプスで播かれた犯罪の種は16年後、東京で連続殺 人として開花した−精神に<暗い山>を抱える殺人者マークスが跳ぶ。元組員、 高級官僚、そしてまた・・・・謎の凶器で惨殺される被害者。バラバラの被害者を 結ぶ糸は? マークスが握る秘密とは? 捜査妨害の圧力に抗しながら、冷血の 殺人者を追いつめる警視庁捜査第一課七係合田刑事らの活躍を圧倒的にリアル に描き切る本格的警察小説の誕生!」と書かれておりました。 「好きな登山と大都会に発生した凶悪な連続殺人事件を結びつけ、本邦初の本格 的警察小説に挑戦している」と書かれている通り、直木賞受賞作だけあって、非 常に読み応えのある大作でした。犯人の水沢裕之と、主人公・合田刑事たちの壮 絶なドラマが終焉を迎えるところでは感動のあまり、目頭が熱くなってしまいまし た。異様なほど緻密なリアルティさをもった圧倒的筆力で描かれた、素晴らしい作 品でした。 先頭へ |
| 185.M1(エム・ワン) ★ 池井戸 潤著 講談社 2000年3月21日発行 大阪市立福島図書館 |
帯に、「誰も読んだことのない金融パニック・サスペンス あの金に侵された者は 狂い始める。町は闇の通貨に支配されていた。元商社マンの高校教師は、教え 子の父の会社を救うために企業王国のドンに戦いを挑んだ。」と書かれておりまし た。 題名になっている「M1」は、「狭義のマネーサプライを意味する記号で、現金と預 金の総量を指す言葉だったのですね。この物語では、闇の通貨・田神札を指して いて、この通貨は田神町だけに流通している闇のお札なのでした。 寝っころがりながら読むには最適な作品でありまして、高校二年生の黒沢麻紀と 主人公である教諭・辛島武史のやり取りが面白くて、一気に読んでしまいました。 著者さんは、さすがにコンサルタント業、金融ビジネス書の執筆もされているだけ あって、その道のプロならではの臨場感・緊迫感のある経済小説に仕上がってい ました。群馬県のある町の亜鉛精錬所の風景を思い浮かべながら、楽しく読ませ てもらった作品でした。 先頭へ |
| 186.恐怖の骨 ★ 和田はつ子著 光文社 1997年7月30日発行 大阪市立福島図書館 |
カバーに、「新宿区下落合のアパートの一室で発見された不可思議な白骨! 長 椅子に横たえられた一体の黄白色の骨を鑑定するため、検死官・田代ゆり子は現 場へ・・・・。検死の結果、遺骨の骨年齢は80歳代の老年男性と推定された。だが 歯型から判明した身元は24歳の青年だった!? この青年がここまで老化したの はなぜか。さらにゆり子は、21歳の美人タレントの変死体を検死する。拒食症の 噂のあった彼女は、なんと一カ月で超肥満になり、急性の糖尿病で死んでいた。 続いて若き能役者を襲う第三の事件が・・・・。若者達の不可解な死に共通する凶 々しき狂気! 若き女性検死官が、異常犯罪に挑む書下ろし意欲作!」と書かれ ておりました。 この作品は、“検死官・田代ゆり子”シリーズの二作目だそうです。狂気の世界を 『骨』をテーマにして、主人公・田代ゆり子の成長をうまく描いてくれています。 脇役に、捜査一課刑事・須原透、先輩の法医学者・西居純一郎、監察医・江川浩 司たちが登場していて、寝っころがりながら楽しく読ませてもらった本でした。 先頭へ |
| 187.果つる底なき ★★ 池井戸 潤著 講談社 1998年9月10日発行 大阪市立福島図書館 |
帯に、「元三菱銀行員の大型新人が内幕を抉る新しい金融サスペンスの誕生! 本年度江戸川乱歩賞受賞作! 債権回収を担当していた同僚が死んだ。謎の言 葉と、不正の疑惑を残して。彼の妻は、かつて『私』の恋人だった・・・・。先端企業 への融資をめぐる大銀行の闇に、私は一人、挑む。」と書かれておりました。 銀行員だった著者さんが実際に体験した出来事をモチーフにしているだけあって、 臨場感、緊迫感に満ちた作品です。主人公・融資課の課長代理である伊木遥と、 元融資先で倒産した会社の一人娘・菜緒のやりとりが面白いのですね。大銀行 の中小企業への融資をテーマに、銀行の支店内部の実体をリアルティに描いてく れています。読後感も爽やかで、余韻を楽しめた作品でした。 先頭へ |
| 188.凍える牙 ★★ 乃南アサ著 新潮社 1996年4月20日発行 大阪市立中央図書館 |
カバーに、「深夜のファミリーレストランで突如、男が炎上した。数日後、ベイエリア に無残にも噛み殺された死体が。異様な二つの殺人事件を追う警視庁機動捜査 隊刑事・音道貴子の前に想像を超える野獣が姿を現した−凄絶な復讐劇と疾走 感あふれる追跡劇。女性刑事小説の分野に、新ヒロイン誕生!」と書かれており ました。 さすが第115回直木賞受賞作だけのことはありますね! 疾風と名づけられたウ ルフ・ドック、昭島市から幕張まで時速50キロで一気に疾走する犬が本当の主人 公なんですね。根性がハンパじゃない音道刑事の奮闘ぶりには圧倒されていまい ます。相棒の刑事滝沢とのやりとりも面白いし、難しいことなんか何にも考えない で楽しく読めた素晴らしいエンターテイメント小説でした。 なお、この作品には「鎖」という続編があるそうです。 先頭へ |
| 189.落伍せし者 ★ 小杉健治著 勁文社 1999年2月10日発行 大阪市立福島図書館 |
帯に、「自殺、殺人、リストラ、家庭崩壊。孤独に暗黒に彷徨う男。その果てに−」 と書かれておりました。 主人公・大手電機メーカーで半導体事業部の開発部門に勤務する大原が、連帯 保証人になっている義兄の会社の倒産に遭うことから物語は始まります。そして、 出向を指示され、ひょんなことから女装を始め、初めて外に出た途端、刺されてし まいます。結局、会社は退職、家族はバラバラに。再就職した会社も計画倒産し てしまうのでした。無職に戻ってしまった大原は、義兄の自殺に疑問を抱き、一人 で調査し始めるのですが....。 まあこれでもかこれでもかと苦難の連続、捨て身になって最後は事件を解決し、 ハッピーエンドで終わるのですが、主人公と同じ世代の私には、身につまされる 思いがした作品でした。 先頭へ |
| 190.拳鬼伝 ★ 今野 敏著 徳間書店 1992年6月30日発行 大阪市立福島図書館 |
カバーに、「その夜、渋谷センター街に緊張が走った。センター街を仕切っている 若者チーム『渋谷自警団』に、別のグループが歯向かったのだが、人数と機動力 に優る『渋谷自警団』に、袋だたきにされていた。その瞬間、黒い影が飛び出し、 若者たちをたった一撃で打ち倒し始めた。全員が倒れ、目出し帽の男は去った。 渋谷署刑事捜査課強行犯係の刑事・辰巳吾郎は整体師・竜門光一に若者たち のケガを見せた。胸骨のアザは、頚椎にまでダメージを与える程の強力な突きの 破壊力を示している。竜門の眼が光る・・・・。凄絶で斬新な拳法アクション!!」と 書かれておりました。 常心流武道の整体療道師でもある著者さんならではのアクション小説です。疲れ ている時、落ち込んでいる時、こういう本を無性に読みたくなるので借りてきまし た。 「八極拳−河北省滄県に古くから伝わる中国武術。強力な発勁を用い、その動 作が剛猛なことで知られる」をテーマにしながら、楽しく読ませてくれた気分転換 に最適な軽い読物でした。 先頭へ |
| 191.青狼記 ★★★ 楡 周平著 講談社 2000年7月25日発行 大阪市立福島図書館 |
紹介文に、「大陸では微妙な力関係で五国のバランスが保たれていた。楽天は 一番の小国である。その楽天に大国・奉金より盟約を結びたいとの申し入れがあ った。条件は人質の交換。しかし、その裏には各々の国家の、そして重鎮たちの 思惑が渦巻いていたのだ。世俗にまみれ、人生に翻弄され、それでもなお愛と勇 気を武器に真摯に生きる若者を大スケールで描く感動巨編。」と書かれておりま した。 主人公は荘趙浚。父・忠英を人質として奉金に差しだされ、銀頭峰に登り石竜の 角を持ち帰っても流刑の身となるのですが、爆筒というとんでもない武器を引き下 げて帝の前に現れ、見事に赦免の沙汰を得ます。そして、隣国との戦いの緒戦を 勝利に導くのですが....。 帯に、「この物語には日本人が失ってしまった心、そのすべてがある。」と書かれ ていたのですが、その通りなんですね。名軍師・春申の言葉、「人の運命とは幸、 不幸表裏一体じゃ。何が幸を呼び、何が不幸を呼ぶかは誰にも分からぬ。そして また、人の一生に無駄なものはありはせぬ。お前がここで強いられている苦労、 いずれなにゆえのものであったのか、きっと分かる日がくる」が、著者さんの熱き 思いをすべて現していたのでした。「愛、正義、友情、義理、人情」をテーマにした 素晴らしい感動を呼ぶ長編ロマンでした。 先頭へ |
| 192.カムナビ<上・下> ★★ 梅原克文著 角川書店 1999年9月30日発行 大阪市立福島図書館 |
帯に、「現代に舞い降りた<禁断の黙示録> 高熱の中で朽ち果てた焼死体。 謎の技術で生成された縄文時代の土偶。3000年の時空を超えて、若き考古学者 は人類の深淵を見た。いま、破滅への物語が静かに動き出す。4年の沈黙を破 って放つ前人未到のハイパー・ホラーの衝撃! 若き考古学者・葦原志津夫は、 前代未聞の土偶を発見したとの報を受け、茨城県・石上遺跡へと向かった。だが 、現場には無惨な焼死体が転がっており、情報提供者とも連絡が取れなくなって しまう。志津夫はわずかな手がかりを頼りに、前代未聞の土偶と死体の焼かれた 温度が共に摂氏1200度以上という共通項を探りあてる。それが人類を破滅へと 導く予兆と知らずに・・・・。いまここに前人未到の物語が幕を開ける!」と書かれ ておりました。 奇想天外、荒唐無稽、支離滅裂といってもいいような内容の小説なのですが、私 はこの作品が大好きになってしまいました。というのも、未だに解明されない邪馬 台国、卑弥呼や宇宙の神秘を題材にしてくれているんですね。おまけに、草薙剣 や遮光器土偶、蛇神、アラハバキ神、カムナビ山(神の火の山)、旧辞(古事記と 日本書紀の原典)、登美能那賀須泥毘古(トビノナガスネヒコ)まで登場してくれ ていて、圧倒的なのでした。 この本では、古代日本に存在した局部的な亜熱帯気候が蘇るのですが、今まさ に日本の一部では亜熱帯のような酷暑が続いています。読みながら、ついにカ ムナビの登場か!?と思いを馳せながら、楽しく読ませてもらった素晴らしいエン ターテインメント大作でした。 先頭へ |
| 193.予知夢 ★★ 東野圭吾著 文藝春秋 2000年6月20日発行 大阪市立福島図書館 |
[目次] 夢想る(ゆめみる) 霊視る(みえる) 騒霊ぐ(さわぐ) 絞殺る(しめる) 予知る(しる)。 帯に、「君が生まれる前から僕たちが結ばれることは決まっていた。十六歳の少 女の部屋に男が侵入した。十七年前に男が見たという夢は、果たして妄想なの か?」と書かれておりました。 刑事の草薙俊介が摩訶不思議な難事件に遭遇するたびに、帝都大学の助教授 である物理学者・湯川博士に相談しに行く形式に則って、話が進んでいくのが、 とても心地良かったのでした。 この本は、「探偵ガリレオ」シリーズ第二弾で、五編の短編からなる短編集だそう ですが、なかなか粒が揃っていて、どの作品も楽しく読めたのが印象的でした。 とくに、「夢想る」は、これは絶対オカルトだと勝手に決めつけていたのですが、 ところが、湯川博士によって、とても合理的に解決されてしまったのには驚いて しまいました。それにしても、著者さんの持ち味である本格推理に、いつもなが ら圧倒されてしまうのが、少し口惜しかったのでした。 先頭へ |
| 194.脳男 ★ 首藤瓜於著 講談社 2000年9月11日発行 大阪市立福島図書館 |
帯に、「第46回江戸川乱歩賞受賞作 満場一致 全選考委員絶賛!未知なる怪 人が誕生した 連続爆弾魔のアジトで見つかった心を持たない男。謎だらけの存 在が犯人を追いつめ、街ではパニックが加速する。」と書かれておりました。 身長190センチ、体重120キロの巨漢警部・茶屋が捕まえた心を持たない男を、医 療センターに勤務する精神科医・鷲屋真梨子が精神鑑定をします。調べていくと この男・鈴木一郎には自我が欠落しているのではとの疑いが出てくるのですが. ...。 精神の世界を舞台にしながら、自我の形成をテーマにしているようですが、刑事 と女医さんたちのやりとりがけっこう面白いので、分からないなりにけっこう楽しく 読めた作品でした。 先頭へ |
| 195.薬師 ★ 和田はつ子著 角川書店 2000年9月30日発行 大阪市立福島図書館 |
帯に、「人を喰って薬となす かつて牛肉や猪、野鳥などの肉類を食べることは 『薬食い』といわれていた 人々は肉類が、栄養不足を原因とした多くの病気を 癒すことを知っていたのだ もちろん人肉も例外ではなかった 闇に隠された歴史 が新たな死を生み落とす戦慄のホラーミステリー。“日本の薬膳”という本に関わ る文化人類学者・日下部のまわりで起きる連続殺人事件。次々と発見される患 部を抉り取られた末期癌患者たちの異様な死体。これらの事件に秘められたもの は何なのか。女性刑事・水野薫の協力を得て、事件を追う日下部が辿り着いたの は、かつてある村で行われていた人食の歴史だった−」と書かれておりました。 アイヌとロシア人の血をひく主人公が、トス(アイヌ語で霊媒、シャーマンを意味す る)という予知能力を持っていて、難事件?を解決するシリーズの一冊です。帯の 内容がスゴイので借りてきましたが、残念ながら内容は少し期待はずれでした。 いうのは、民俗学やハーブ料理のお話がいっぱい出てきて、食傷気味になってし まったからなのですが。でも、民俗学ミステリーでありますし、主人公は何となく 内田康夫氏の浅見光彦に似ているし、読んで楽しい作品でした。 先頭へ |
| 196.種の復活 ★ 北上秋彦著 祥伝社 1998年6月10日発行 大阪市立福島図書館 |
カバーに、「世界保健機関が撲滅を宣言したはずの天然痘が、突如、青森に出 現した。医療ジャーナリストの風間は真相を追って現地へ飛ぶが、続いて隠岐諸 島で空気感染するエイズが発生し、熊本ではペストが猛威をふるい始めた! な ぜ三つの凶悪伝染病が同時多発を? 列島パニックの中、風間が疫病と直前の 縄文人ミイラ消失事件の繋がりに迫ったとき、背後に、太古の日本と現代を結ぶ 驚愕の陰謀が浮上した! 小説界注目の新星が人類史の謎に挑む最新超級サ スペンス!」と書かれておりました。 著者さんの仮説(26万人いたとされる縄文人が、その後の1000年間に7万人ま で人口を激減させている。代わって日本の支配者となったのは、大陸から渡来し てきた弥生人だった。このとき日本に、いったい何が起こったのか。近年活発化 したガンウィルスや数々の出現ウィルスの存在が原因では?)が興味深かった ので借りてきました。 これでもかこれでもかと殺人ウィルスが猛威を奮うのですが、この程度のパニック で本当に収まるとは到底思えなかったのでした。でも、寝こっろがりながら読むに は最適なパニック小説には違いなかったでした。 先頭へ |
| 197.ビタミンF ★★ 第124回直木賞受賞作 重松 清著 新潮社 2000年8月20日発行 大阪市立図書館共有 |
[目次] ゲンコツ はずれくじ パンドラ セッちゃん なぎさホテルにて かさぶたまぶた 母帰る この本は、著者さんが「ひとの心にビタミンのようにはたらく小説があったっていい 。そんな思いを込めて、七つの短いストーリーを紡いでいった」短編集で、Family、 Father、Friend、Fight、Fragile、Fortune・・・<F>で始まる言葉をキーワードに した七つの家族の「お話」から構成されていました。 「ゲンコツ」は、38歳になった主人公が、マンション付近でたむろする悪ガキたち が自動販売機にイタズラしているところに出くわすお話、「はずれくじ」は、警察に 補導された中学一年生の息子のお話、「パンドラ」は、万引きで補導された中学 二年生の娘のお話です。 「セッちゃん」は、中学二年生になる娘がいじめにあうお話、「なぎさホテルにて」 は、主人公が二十歳の時に泊まったリゾートホテルに、家族みんなで行くお話、 「かさぶたまぶた」は、心につっかい棒をしながらカッコつけている?主人公が、 小学6年生の娘が自画像をちゃんと描けなくなった出来事をきっかけに、そのつ っかい棒が一時折れてしまうお話、「母帰る」は、主人公の父が母と10年前に離 婚したにもかかわらず、また母と一緒に住みたいと願うお話です。 「ゲンコツ」の主人公はカッコいいんですね、深夜、マンションの廊下で助走をつけ て、右足で回し蹴りのポーズ、「ライダーキック、とうっ!」なんですから。 中年の域に達しつつある父親を主人公にしながら、家族愛をテーマに、真面目に 生きている人達を暖かい目で見つめてくれているのが、とても好感が持てた作品 でした。 先頭へ |
| 198.神の柩 ★★ 本岡 類著 講談社 1999年3月10日発行 大阪市立中央図書館 |
紹介文に、「世紀末日本に彗星のごとく現れた団体『理性の跳躍』。エリート層を 中心に七千名の会員を擁し、膨大な資金力を持つ彼らが主張する強者の論理が 人々の心をとらえていく。だが、その陰でひっそりと不可解な死を遂げた男がいた −。混迷の現代社会を問う書き下ろし長編サスペンス。」と書かれておりました。 主人公は、企業のPR誌などを請け負っている社員わずか三人の会社社長・柏木 です。ある日、いっしょに新聞社を辞めた元同僚のフリーライター・江崎が訪ねて きたところから、お話は始まります。そして、彼は不可解な死を遂げ、柏木は友人 の死に疑問を持ち、調査を始めるのですが....。 この本はけっこう掘り出し物でありまして、とくに、「理性の跳躍」の代表者・高宮 真澄の著書として書かれている「2022年不寛容の世界」の経済予測には、目を 見張るものがありました。また、自然農法や魔法の野菜にも触れてくれていたの には、びっくりしてしまいました。著者さんの博学ぶりには圧倒されるものがあり ましたし、小説としてもけっこう面白かったので、今度、図書館に行った時には 著者さんの他の作品をぜひ探してみようと感じた冒険小説でした。 先頭へ |
| 199.かくし念仏 ★★ 和田はつ子著 幻冬舎 1998年8月20日発行 大阪市立中央図書館 |
紹介文に、「三重ラセン構造を呈した迷宮のミステリ。民俗学ミステリの大収穫。 著者が満を持して贈る『日本人とは何か』を問う巨編。隠された紋様とは・・・。江 戸時代のエコロジストが発見した妙薬を探る旅がほんの入り口。一枚の扉が閉 じると別の扉がこじ開けられ・・・。」と書かれておりました。 物語は三部構成になっておりまして、第一部は、女子大で文化人類学を教えて いる日下部遼が、研究室に雇い入れたアルバイト・榊原久美に食中毒死させら れそうになります。そして、連続青酸カリ自殺事件に巻き込まれていくのですが ....。第二部は、高校時代の旧友からの誘いで、函館にあるミッションスクー ルに一か月間だけ、非常勤講師として赴任するのですが。 第三部は、なんとか難事件も収束した後、隠れるように休養していたある日、妹 が失踪してしまうところから、お話が始まるのですが....。 「民俗学ミステリの大収穫」とうたわれている通り、「アイヌ虐待史」、「天才学者・ 安藤昌益」、「かくし念仏」、「漢方薬」、「聖女と悪魔信仰」、「大麻」、「かくれキリ シタン」、「簪を挿す聖母」などをテーマにしながら、日下部と水野薫刑事が大活躍 してくれています。今回は、最後に登場する「闇の組織」の黒幕が非常に強力な のが印象的なんですね。結末が悲しくて、涙が出てきてしまった素晴らしいサイコ ミステリーでした。 先頭へ |
| 200.羊ゲーム ★ 本岡 類著 集英社 1997年6月30日発行 大阪市立福島図書館 |
帯に、「砂つぶ世代のサバイバル まとまりのない若い世代を食いつくすヤツら。 嵌ったら一生、抜けられない恐怖のゲームとは!? エリート大学生が惨殺され た。遺留品は名簿の一部と思える紙切れのみ。被害者は専門学校に通う息子の 小学校時代の親友だったと知って、刑事は慄然とする。砂つぶのようにパラパラ として捉えどころのない若者、それを苦々しく感じている父親の世代。この二つの 世代の狭間で暗躍する“裏情報社会の住人”事件を解く鍵は、謎の言葉『羊ゲー ム』にあった−」と書かれておりました。 主人公の刑事・永島は、誤認を犯して休職処分となっていたのですが、迷宮入り となりそうな事件の捜査を非公式に手伝わされるんですね。そして、なんと一人息 子が拳銃を自宅に隠し持っていたことが判明し、いよいよ追いつめられるのです が....。 この作品は永島父子の物語でありまして、この二人の掛合い漫才のようなやりと りが最高なんですね。そして、ヒロイン?の沢村未緒さんがとっても素敵なのでし た。生きる目的がはっきりしていると、爽やかさもエネルギーも自然、湧き出して くるのだという著者さんの主張がすごく印象に残った本でした。 先頭へ |
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