| 宮部みゆきさんの作品のページ (右の写真は中之島公園です。) |
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| 1960年東京生まれ。本名=矢部みゆき。東京都都立墨田川高校卒業。 87年に、「我らが隣人の犯罪」で第26回オール読物推理小説新人賞、 88年に「歴史文学賞(佳作)」を受賞。89年に、「魔術はささやく」で 日本推理サスペンス大賞、92年に、「本所深川ふしぎ草紙」で 吉川英治 文学新人賞、93年に、「火車」で山本周五郎賞を受賞。 |
| 1.魔術はささやく ★★ 日本推理サスペンス大賞受賞 新潮社 1989年12月10日発行 大阪市立中央図書館 |
[あらすじ] 主人公の守は、16歳の高校生。12年前に、枚川市役所の財務課長 補佐だった父親が五千万円の公金横領容疑で突然失踪します。その後、母親に 育てられるのですが、その母も亡くなって叔母さんの家に引き取られます。そして 、不可解な自殺事件が相次いで発生し、守は巻き込まれていくのですが....。 読んでいて、私はこの作品が大好きになってしまいました。 というのは、サブリミナル効果や鍵師の話や、キャッチセールスの仕組みなども 出てきて、大変興味ある設定のせいかもしれません。でも、宮部さんの作品には 温かく見守るといった姿勢があるような気がするのですね。あまり評判の良くない 時代小説などは、特にそうですし、この作品も同じなのですね!? 主人公の守の目覚ましい成長を見守る周りの姿勢、同級生の<あねご>の女性 としての素晴らしさなど、本当に読んで良かったと思わせた作品なのでした。 ▲先頭へ |
| 2.淋しい狩人 新潮社 1993年10月15日発行 大阪市立福島図書館 |
帯には、「事件はいつも本から始まる・・・。電車の網棚に忘れられた一冊の文庫 本。父親の遺品から出てきた数百冊の同じ本・・・。」と書かれておりました。 [目次] 第一話 六月は名ばかりの月 /第二話 黙って逝った /第三話 詫びない年月/第四話 うそつき喇叭 /第五話 歪んだ鏡 /第六話 淋しい 狩人 この本は、「小説新潮」に1991年6月号から1993年6月号まで断続的に連載 された連作短編小説だそうです。主人公は、亡くなった親友が経営していた古本 屋の面倒をみているイワさんこと、岩永幸吉と、彼の孫である高校生の稔です。 「六月は名ばかりの月」は、古本屋に逃げ込んできた若い女性の姉の失踪事件 のお話、「黙って逝った」は、ある青年の父親が亡くなった時、本棚を整理しよう としたら、同じ本が302冊あったお話、「詫びない年月」は、近所の荒物屋の柿崎 宅の地下にあった防空壕から遺体が出てきたお話です。 「うそつき喇叭」は、古本屋で万引きをした少年を虐待している犯人捜しのお話、 「歪んだ鏡」は、電車の網棚に忘れられた一冊の文庫本にはさんであった名刺 のお話、「淋しい狩人」は、古本屋のなじみ客である若い女性が店に一冊の本を 持ち込んできます。彼女の父親は推理作家だったのですが、12年前に事故で 行方不明になったままだったのですが....。 「うそつき喇叭」と、「淋しい狩人」がとても良い作品だったと思いましたが、軽くて 読みやすくて肩が凝らなくて、寝っころがりながら読むのに最適な作品ばかりな のでした。 ▲先頭へ |
| 3.とり残されて 文藝春秋 1992年9月25日発行 大阪市立福島図書館 |
[目次] とり残されて /おたすけぶち /私の死んだ後に /居合わせた男 / 囁く /いつも二人で /たった一人。 帯には、「この世であってこの世でない、宮部みゆきの怪しい世界七篇」と書かれ ていました。 この本は七篇の短編から構成されています。「とり残されて」は、婚約者を交通 事故で亡くした主人公が、勤務する小学校の保健室の前で、3年生ぐらいの不 思議な男の子に出会います。そして、学校のプールに水死体が発見されるの ですが....。 「おたすけぶち」は、おたすけ淵と呼ばれるところで、交通事故で亡くなった兄の 供養に来た主人公が、死んだはずの兄に再会するお話、「私が死んだ後に」は、 プロ野球の投手の佐久間が繁華街で暴漢に刺され、死にかけているところに 不思議な若い娘が現れるお話です。 「居合わせた男」は、特急のグリーン車で二人連れの女性たちから、不可解な 自殺事件を聞かされた主人公が、真相を突きとめようとするお話、「囁く」は、 お札が口をきいて、囁くというお話、「いつも二人で」は、真琴という名を付けられ たフリーターの若い男性が、知人の家の留守番をしている時に、その家で自殺 した若い女性にとりつかれたお話、「たった一人」は、不思議な夢を毎夜みる主人 公が、その謎を突きとめようと、近くの探偵社に入っていくのですが....。 摩訶不思議なお話で、面食らってしまいましたが、なんとも言えない余韻が残る 作品ばかりなのでした。とくに、「私が死んだ後に」と「いつも二人で」は、設定が 非常に面白くて、好きな作品になったのでした。 ▲先頭へ |
| 4.クロスファイア (上・下) ★★★ 光文社 1998年10月30日発行 大阪市立福島図書館 |
裏表紙に、「深夜の廃工場。三人の若者によって、男が水槽に投げ込まれようと していた。それを目撃したOL・青木淳子は、念を込めて掌から火炎を放ち、瞬時 に若者二人を焼殺した。彼女は念力放火能力を隠し持つ超能力者だった! 若者たちに連れ去られた恋人の救出を瀕死の被害者に頼まれた淳子は、逃走 した残る一人の行方を探すが....。警視庁放火捜査班の刑事・石津ちか子は、 不可解な焼殺の手口からある未解決事件との類似に気づく。東京・荒川署の牧 原刑事とともに捜査を開始したちか子の前に、新たな火炎焼殺事件が....! 宮部みゆき、渾身の力作1200枚.ここに登場!」 下巻の裏表紙には、次のように書かれておりました。 「あたしは装填された銃だ。持てる力を行使し、無軌道に殺人を続ける若者たち を処刑する。人は自分の行為にふさわしい罰を受けなければならない−青木 淳子はそう信じて、血と炎と黒焦げ死体とともに復活した。連続焼殺事件の背 後に、念力放火能力者の存在を疑う警視庁の石津ちか子・牧原両刑事は、 過去の事件関係者を洗い、ついに淳子の存在に気づくが....。さらにガーデ ィアンを名乗る自警組織が一連の処刑は淳子によるものと察知! 彼らは巧妙 に淳子を組織に誘う。正義とは何か。今、最も熱き宮部みゆきが鋭く問う興奮 の超大作完結!」。 全2巻なのですが、とても面白い作品なので、徹夜して一気に読んでしまい ました。この作品も、宮部さん得意の超能力者が主人公です。なんでも、青木 淳子が登場する「燔祭」の続編だそうですが、図書館では見たこともないので、 きっと予約しないとだめなのでしょうね!? とても哀しくて、切なくてしようが なくなる作品で、心にジーンと来た作品なのでした。でも、私はなぜか結末に 納得が行かなくて、自分なりに結末を変更してしまったのでした(もっとも読み 終えて、風呂の中で勝手に思いついたのですが)。私のストーリーは、「ラスト シーンに、<ゴット>と呼ばれる超能力者が現れ、淳子さんを連れ去ります。 そして、数日後、牧原刑事が辞表を提出し、どこかに去ってしまいます。さらに、 かおりちゃん親子も消えてしまうのですね。このため、警察はほっておけず、緊 急捜査会議を開くのですが、その末席にいるちか子さんだけは下を向きながら、 一人笑いをこらえていたのでした」というものです。だから、私の希望は、「この メンバーたちに、ガーディアンを壊滅してもらう!?」ことなのですね。ですから、 著者さんには頑張っていただいて、2000年頃にはぜひとも、<クロスファイア 2>を書いていただけたらと、心から願いながら、本を返却しに行ったのでした。 ▲先頭へ |
| 5.鳩笛草 ★★★ 光文社 1995年9月25日発行 大阪市立福島図書館 |
[目次] 朽ちてゆくまで /播祭 /鳩笛草。 裏表紙には、次のように書かれておりました。 「★朽ちてゆくまで−祖母の死でひとりぼっちになった麻生智子。八歳のとき 交通事故で両親を亡くし、同乗していた智子は助かったものの記憶喪失に.. ..。祖母が隠していたビデオを見て、記憶を失くす以前の自分には<ある 秘密の能力があった>ことを確信した! そして....。 ★播祭−女子高生の妹が乱暴され、溺死した。復讐を誓う兄の前に現れた 女は「私がお役に立ちます」と言って、眼でキャンドルの火をつけた・・・・胸を 打つ結末!★鳩笛草−城南署捜査課の本田貴子には、人の心を読める透 視能力がある。そのことが彼女にある衝撃を....。今、最も注目される人気 作家が描く情感溢れる異色ミステリー中編三部作!」。 クロスファイアを読んだら、どうしても青木淳子さんが初登場する「播祭」を読み たくなって、予約をしたのが到着したので、さっそく読んだのですが、本当に よかったですね。著者さんが珍しく再度、青木淳子を登場させて、「クロスフ ァイア」を執筆されたのが、すごく納得できたのでした。とくにラストシーンが 切なくて、哀しいこと!雨の中で、水蒸気を立ち昇らさせながら立っている淳子 の姿が、目に浮かぶようなのでした。 また、「鳩笛草」もとてもよい作品でした。人の心が読める超能力が弱ってきた ために、体の具合が悪くなってくるなか、彼女は同僚と協力して、数々の事件 を解決していくのですね。最後は、療養のために実家に帰っていってしまうの ですが.... 。同僚の大木刑事のあったかさが、ジンと心に伝わってきたのでした。 ▲先頭へ |
| 6.長い長い殺人 ★★ 光文社 1992年9月15日発行 大阪市立福島図書館 |
| [目次] 刑事の財布 /強請屋の財布 /少年の財布 /探偵の財布 / 目撃者の財布 /死者の財布 /旧友の財布 /証人の財布 /部下の財 布 /犯人の財布 /エピローグ /再び、刑事の財布。 帯には、「僕、あの人が怖いんだよ。あの人と結婚しちゃいけない! 完全犯罪 はありうるか!登場人物が持つ10個の財布が独白する異色推理小説。輪舞 形式の異色推理小説−保険金殺人の犯人は、この男しかいないのだが、いつも 完全アリバイがある。少年、刑事、旧友など10人が持つ財布が事件を語る輪舞 形式の異色小説。」と書かれておりました。 私は、この小説が大好きになりました。財布を擬人化して、書かれているのです が、それがいいんですね。もっとも私の財布も、これらの登場人物の財布と同様 で、いつも悲しい顔して、それでも持ち主を守ってやろうと頑張ってくれているん でしょうね!? かわいそうにふくらんだためしがないのですが、せめて大事に 使ってやろうと急に思ったのでした。でも、この作品を読んでいて、三浦某氏の 顔が浮かんできたのが、とても残念なのでした。 ▲先頭へ |
| 7.理由 ★★ 朝日新聞社 1998年6月1日発行 大阪市立福島図書館 |
帯には、「家が、家族が、そして人がだんだん壊れていく。<一家四人殺し>は なぜ起こったか。事件はなぜ起こったのか。殺されたのは<誰>で、<誰>が 殺人者であったのか。そして、事件の前には何があり、後には何が残ったのか。 宮部みゆき待望の長編ミステリー。」と書かれておりました。 [あらすじ] 大雨の深夜、高層マンションの二十階から人が落ち、その部屋から 三遺体が発見されます。そして、警察の調査でエレベーターの中に血だまりがあ ったこと、その時間に不審な二人の人間が目撃されていることが判明します。 また、遺体確認の段階で、死んだと思われた一家が生存していることがわかり、 話は死んでいたのは誰かという点に移っていくのですが....。 この作品は朝日新聞夕刊に1996年9月2日から1997年9月20日まで連載さ れていましたので、ご存知の方も多いと思います。バブル崩壊による自己破産 や家族における持ち家の問題、裁判所の行う不動産競売の執行妨害などを題材 にしながら、とても考えさせられる作品に仕上がっているように感じました。私の 大好きな超能力はでてきませんが、現代社会が抱えている難題に正面から取り 組んでくれているし、これはこれでいい作品だと感心しながら読んでいたのでし た。 ▲先頭へ |
| 8.スナーク狩り ★★ 光文社 1992年6月10日発行 大阪市立福島図書館 |
紹介には、「スナークとは!? 愛、裏切り、友情、報復! 人間の真実を抉る サスペンス傑作!」と書かれておりました。 [あらすじ] 関沼慶子は、元恋人の披露宴会場へ散弾銃を持って向かいます。 そして、その場で元恋人の妹に止められ、やむなく帰宅するのですが、マンショ ンの駐車場で意外な人物に襲われ、ベンツと銃を奪われます。そして、その犯 人を慕う職場の同僚である青年と元恋人の妹が犯人の後を追っていくのですが ....。 <スナーク>とは、ルイス・キャロルが書いた、とてもおかしな、長い詩のような ものである「スナーク狩り」に出てくる正体不明の怪物の名前で、それを捕まえ た人は、その瞬間に、消えてなくなってしまうそうです。この小説には、「怪物」 のような人間が多数登場します。犯人の別れた母娘を射殺した未青年の男女、 それに関沼慶子の金目当てに近寄り、彼女をポイと捨て、彼女が結婚式に来 ていた事を知り、殺そうとした男たちです。この男は殺人容疑で逮捕され、未成 年の男女は最後には散弾銃を発射した際に自爆してしまうのですが....。 とても哀しくて、言いようのない気分になってしまう展開なのですが、最後はこれ でよかったのだと思わせる結末だったのが印象的でした。 ▲先頭へ |
| 9.人質カノン ★ 宮部みゆき著 文藝春秋 1996年1月30日発行 大阪市立福島図書館 |
[目次] 人質カノン /十年計画 /過去のない手帳 /八月の雪 /過ぎた こと /生者の特権 /漏れる心 帯には、「犯人のふしぎな落し物 深夜のコンビニで悲喜劇の幕があいて..。 街の片隅の小さな大事件。珠玉のミステリー7編」と書かれておりました。 「人質カノン」は、主人公のOL・遠山逸子が、総務課の忘年会の帰りに立ち寄っ たコンビニエンス・ストアで、フルフェイスのヘルメットをかぶり、黒い皮ジャンを 着込んだ強盗に人質にされてしまうお話、「十年計画」は、タクシーの運転手で ある四十代半ばぐらいの女性が主人公です。彼女は、二十歳のとき、突然、 自動車の運転免許をとるんですね。その理由が人をひとり殺してやろうと思っ たからなのですが....。 「過去のない手帳」は、主人公である大学生・田中和也が、電車の中で、手帳 を拾います。その手帳には、アドレス欄に一人の女性の名前が書かれているだ けで持ち主がわからないため、彼はそのままに持っていたのですが、気になって 持ち主を調べ始めるお話です。 「八月の雪」は、主人公である中学生・充が中学校で不良に追いかけられ、通用 門から飛び出した時に、運悪く四トントラックに轢かれ、右足を失って以来ふさぎ こんでいたのですが、病死した祖父の残していた昔の遺書を読んでから、意欲を 取り戻すお話、「過ぎたこと」は、探偵事務所の所員が、ボディーガード・サービ スを依頼してきた少年に会います。少年はいじめにあっていて、彼は真剣に少年 の相談にのっていくのですが....。「生者の特権」は、失恋したため、飛び降り 自殺しようと深夜、適当なビルを捜していたOLの田坂明子が、小学校の門をよじ 登ろうとしている小学生に会い、いじめにあって宿題を隠されたため、取りに来て いることを聞かされ、一緒に真っ暗な小学校に入っていくお話です。 「漏れる心」は、主人公である主婦・照井和子が、上階の水道管の亀裂による水 漏れで、大変な目に遭うお話です。主人の転勤のため、マンションを売ろうとオー プン・ルームを行う予定日だったのですね。そのうえ、事故を起こした部屋の持ち 主は学生で見かけたこともない人物だったのですが....。 超能力や大事件は起こらないのですが、身近にありそうな心のこもった作品ばか りです。読んでいて、知らないあいだに宮部ワールドに引き込まれていたのでし た。とくに、「八月の雪」・「生者の特権」が素敵な作品なのでした。 ▲先頭へ |
| 10.天狗風−霊験お初捕物控<二> ★ 新人物往来社 1997年11月15日発行 大阪市立中央図書館 |
[あらすじ] 嫁入り前の若い娘が次々と神隠しにあった。忽然と姿を消した娘た ちの謎を追うお初と右京之介。不思議な煙に巻かれて消えた娘たちに何が起こっ たのか? 『震える岩』に続く霊験お初捕物控シリーズ第二弾」と書かれておりま した。 主人公のお初さんは、「かまいたち」に収録されている「迷い鳩」「騒ぐ刀」で デヴュー、「震える岩」、この「天狗風」で大活躍してくれています。この作品では、 お初さんは、南町奉行所の奉行・根岸肥前守鎮衛の依頼で、一連のかどわかし を、算学者の右京之介とともに調べ始めたところ、早くも<天狗?>に襲われる のですが....。 また、この天狗は、観音さまの姿をしているため、「天狗の正体はいったい何物? 退治する方法はあるのか?」などなど、興味の尽きないストーリーとなっていたの でした。大きな将棋の駒や狸の置物に化けて、お初さんを助ける奇妙な猫の鉄や 、和尚と呼ばれる猫たちが登場したりと、少しズッコケたところもあるのですが、 これはこれでまた、楽しかったのでした。右京之介が言った『美しさは、それを 見る者の心のなかにだけある』という言葉が妙に心に残った作品でもありまし た。 ▲先頭へ |
| 11.心とろかすようなマサの事件簿 ★ 東京創元社 1997年11月28日発行 大阪市立図書館共有 |
[目次] 心とろかすような /てのひらの森の下で /白い騎士は歌う / マサ、留守番をする /マサの弁明。 カバーに、「俺の名はマサ。蓮見探偵事務所の用心犬である。著者のデビュー 長編『パーフェクト・ブルー』で登場したジャーマン・シェパードの老犬マサと蓮見 探偵事務所の面々−父親で所長の浩一郎、長女で短大卒業後、父親の許で 女性調査員として働き始めた加代子、次女で美術の方面に進みたい希望を持っ ている高校生の糸子、それに前作で蓮見一家と親しくなった好青年、諸岡進也 ・・・・お馴染みの人たちが遭遇する五つの事件。本書はそこに登場する様々な 人間たちの実像に、あくまでも真っ向から立ち向かおうとする彼らの活躍をマサ の目を通して語る、待望の初短編集である。」と書かれておりました。 「心とろかすような」は、秋の作品展のために、学校の制作室に居残っている高 校生の糸ちゃんを、彼女より一つ年下の諸岡進也が迎えに行ったのですが、な んと二人は朝帰りをやらかしてしまったことから、お話は始まるのですが...。 「てのひらの森の下で」は、マサと加代ちゃんが、朝の散歩の途中、死体?を発 見するお話、「白い騎士は歌う」は、探偵事務所にやってきた宇野友恵から、強 盗殺人容疑で指名手配されている弟がどうしてお金に困っていたのか、その理 由を調べて欲しいと依頼されるお話です。 「マサ、留守番をする」は、三泊四日の台湾旅行に皆が行ってしまい、寂しく留 守番をするマサが出会った事件のお話、「マサの弁明」は、宮部みゆきという依 頼人から、「夜中、彼女が仕事をしていると、外の通路を誰かがつっかけを履い て歩いてくる」ので、調査を依頼されるお話です。 犬のマサの目を通して、心温まるやりとりを中心に、切なくて哀しい短編を綴って くれています。特に「白い騎士は歌う」が一番お気に入り作品なのでした。 ▲先頭へ |
| パーフェクト・ブルー ★ 創元推理文庫 1992年12月25日発行 大阪市立福島図書館 |
「高校野球界のスーパースターが殺された! 現場に居合わせた弟の進也は、 蓮見探偵事務所の加代子や愛犬マサと、調査に乗り出す。」と書かれています。 現代推理文壇の俊英宮部みゆきの出発点となった処女作品だそうですが、私は たいへん遅れているみたいで、宮部さんの作品を初めて読んだのでした。有名な 方みたいなのですが、図書館の棚には、ほとんど見当たらないせいもあって、こ れからは予約をしようかなと思わせる作家さんなんですね。犬が主人公の形を取 りながら楽しく読ませてくれたし、テンポが良くて一気に読んでしまったのでした。 ▲先頭へ |
| 平成お徒歩日記 ★ 新潮社 1998年6月30日発行 大阪市立福島図書館 |
本のクリアカバーに、「にっぽん文芸界初、ミヤベ・ミユキ初、初ものづくしの マジカル・ヒストリー・ツアー。いにしえのなぞと不思議はアタマでなく足で、 解き明かす前代未聞の歴史<実体験>ツアーにいざ出立。時をかけるミヤベ が、あな怖ろしや毒婦に身をやつし、市中引廻しのうえ島流し。またある時は 赤穂義士に早変わり。ええじゃないかとお伊勢参りに善光寺。あれに見ゆるは 桜田門。」と書かれておりました。この本は小説新潮に年2回掲載されたシリ ーズをまとめたものだそうです。 さて、このツアーは、「1.真夏の忠臣蔵 両国から高輪まで歩くコース 2. 罪人は季節を選べぬ引廻し小伝馬町から日本橋、赤坂御門、四谷御門、 両国橋を通って、刑場である小塚原や鈴々森にいたるコース3.関所破りで 七曲り 小田原から湯本、箱根旧街道を通って畑宿、お玉々池、箱根関所跡 ・資料館にいたるコース 4.桜田門は遠かった 史跡江戸城一周コース 5. 流人暮らしでアロハオエ 竹芝桟橋からフェリーで八丈島に行くコース 6.七 不思議で七転八倒本所七不思議のエピソードの舞台になった場所、両国から 錦糸町を通って亀戸まで歩くコース 7.神仏混沌で大団円 善光寺から中津 川宿、名古屋経由で伊勢神宮、二見浦コース」で構成されています。 最初のほうの悲惨コースから最後のほうのリッチコースまでバラエティに富んで いていて面白いし、コーヒーを飲みながら読むのに最適な作品なのでした。 ▲先頭へ |
| 初ものがたり ★ PHP研究所 1995年7月20日発行 大阪市立福島図書館 |
帯には、「本所深川をあずかる回向院の旦那こと、岡っ引きの茂七が、下っ引き の糸吉、権三とともに、摩訶不思議な事件の数々に立ち向かう。歓び、哀しみ、 苦悩、そして、恋....。江戸下町に生きる人々が織りなす人間模様を描く連 作時代小説。」と書かれておりました。 [目次] お伊勢殺し / 白魚の目 /鰹千両 /太郎柿次郎柿 /凍る月 /遺恨の桜。 6編からなる連作時代小説です。著者さんの江戸物を初めて読みましたが、とて も面白くて感動しました。主人公の茂七と謎の人物である稲荷寿司の屋台の親 父とのからみや、茂七のおかみさんや手下たちとのあったかみのある人情話が 秀逸なのでした。また、季節感のある屋台の料理がすごく美味しそうで、こういう 屋台があれば毎日通ってもいいなあと思いながら、一気に読んでしまいました。 ▲先頭へ |
| 本所深川ふしぎ草紙 ★ 吉川英治文学新人賞 新潮文庫 1995年9月1日発行 大阪市立福島図書館 |
裏表紙に、「近江屋藤兵衛が殺された。下手人は藤兵衛と折り合いの悪かった 娘のお美津だという噂が流れたが....。幼い頃、お美津に受けた恩義を忘れ ず、ほのかな思いを抱き続けた職人がことの真相を探る<片葉の芦>。お嬢さ んの恋愛成就の願掛けに丑三つ参りを命ぜられた奉公人の娘おりんの出会っ た怪異の顛末<送り提灯>など深川七不思議を題材に下町人情の世界を描く 7編。宮部ワールド時代小説篇」と書かれていました。 [目次] 第一話 片葉の芦 /第二話 送り提灯 /第三話 置いてけ堀 / 第四話 落葉なしの椎 /第五話 馬鹿囃子 /第六話 足洗い屋敷 / 第七話 消えずの行灯。 解説のところで、池上冬樹氏が「ベストは第一話の片葉の芦だろう。著者の小 説が多くの読者をつかんでいるのは、読者の胸にストレートに届く登場人物た ちの思いではないか。人物たちの真摯な思い。悪いこと、うまくいかないことが あっても、真面目に生きていればきっと望みが叶うのだという思い。分かりあえ ないかもしれないが、でもいつかは気持ちの通じ合うことがあるのではないか という熱い思い。そんなさまざまな思いが小説の核心にある。 人生とは生きるに値し、否定するものではないことを、小説は教えてくれている ような気がする。僕ら読者が読後しばし、幸福な感情に包まれ、深い満足を覚 えるのは著者の作品にはそんな人生讃歌に溢れているからであろう。」と述べ てくれています。とても素晴らしい作品に仕上がっていますので、もし読まれて いないようでしたら、ぜひどうぞ!! ▲先頭へ |
| 火車 ★★ 第六回山本周五郎賞 双葉社 1992年7月15日発行 大阪市立福島図書館 |
「怪我で休職中の刑事、本間俊介は死んだ妻の従兄の子から、失踪した婚約 者の捜索を依頼され、調査してみると、驚くべき事実が....。如何に犯人の 登場を遅らせ、一言も喋らせずに小説を終わらせるか?という試みが話題にな った作品です。 井上ひさしさんが、「ヒロインに最後の最後まで、読者の前に姿を現させないと いう大冒険を演じさせている。これほど見事なラストシーンはそうざらにはない」 と最大限の賛辞を寄せておられました。 自己破産や夜逃げ・一家離散お話も出てきて、犯人に同情してしまうほど、本当 に哀しい話なのが印象的でした。読み終えた後、このあとの展開を自分なりに ああでもないこうでもないと考え始めてしまって、なかなか寝付けなくて大変困っ た一冊なのでした。 ▲先頭へ |
| 龍は眠る ★★ 日本推理作家協会賞 出版芸術社 1991年2月22日発行 大阪市立福島図書館 |
帯に、「週刊アロー記者の高坂昭吾は、台風の夜、子供がマンホールに落ちて 死亡する事件に遭遇し、その時知り合った高校生稲村慎司から、不思議な話を 聞く。人の心や残存する物体の記憶を読み取れるこの少年は超常能力者なの か? 迷う高坂の前に慎司の従兄と称する直也が現れ、すべてトリックだと謎 解きをして見せるが....彼もまた?」と書かれていました。 題名の龍は、超能力のようなものを指しているんですね。エピローグの最後で、 「我々は身体のうちに、それぞれ一頭の龍を飼っている。底知れない力を秘め た、不可思議な形の、眠れる龍を。そしてひとたびその龍が起きだしたなら、 できることはもう祈ることだけしかない。どうか、どうか、正しく生き延びること できますように。この身に恐ろしい災いのふりかかることがありませんように。 私の内なる龍が、どうか私をお守りくださいますように....。」と書かれてい たのがすごく頭に焼きついたのでした。古い作品なのですが、今読んでも すごく新鮮で感動を新たにしたのでした。 ▲先頭へ |
| 震える岩 霊験お初捕物控 ★★★ 1993年9月30日発行 大阪市立福島図書館 |
[目次] 第一話 死人憑き /第二話 油樽 /第三話 鳴動する石 / 第四話 義拳の裏側 /第五話 百年目の仇討始末。 この作品は、時代小説に掲載された「百年目の仇討始末」を改題、加筆された ものです。時代は享保二年で舞台は深川で、主人公はお初さんという素敵な女 性なのです。でも、彼女は人が見えないものが見えるのですね。ろうそくの流れ 買いをしている吉次が死んだにもかかわらず、生き返ったことから話は始まりま す。これは死人憑きなのですね。それから子供二人が殺されてしまいます。 そして、忠臣蔵の話へとつながっていくのですが....。 とても面白い作品でありまして、母の言葉を借りるとすれば、「ようこんなこと 考えるなあ!」という感じでしょうか!? ますます宮部みゆきさんのファンに なりそうな予感を感じながら、夜更けまで読んでいた作品なのでした。 ▲先頭へ |
| かまいたち ★★★ 新人物往来社 1992年1月30日発行 大阪市立福島図書館 |
[目次] かまいたち /師走の客 /迷い鳩 /騒ぐ刀 /あとがき 中短編四作からなる作品集です。著者さんの非常に初期の作品ばかりなの ですが、これがすごく面白いのですね。感心しました。 「かまいたち」は、町医者の玄庵の娘であるおようが主人公なのですが、< かまいたち>という辻斬りが現れ、彼女は、ある夜、かまいたちと出くわして しまうのですが....。大岡越前の話もでてきて面白い展開が続くので、飽き ない作品に仕上がっていると感じました。 「師走の客」は、短編です。千住の旅篭が舞台なのですが、最後がいいんで すね。金箔を塗った蛇が登場したりして、とても楽しめたのでした。「迷い鳩」 は、「震える岩 霊験お初捕物控」のお初さんが主人公です。「震える岩」の前 の作品ですから、もちろんお初さんのことが丁寧に詳しく書かれていて好感が 持てました。あらすじは、ろうそく問屋の柏屋の女主人が主人を殺すだけの話 なのですが....。 「騒ぐ刀」も、お初さんが主人公なのですが、本当の主人公は二振りの刀なの です。一刀は守り刀であり、もう一刀は虎と呼ばれる妖刀なのです。いろいろ と話が展開しすぎの感もなきにしもあらずなのですが、私はこの作品が大好き です。宮部みゆきさんのプロでない時代の作品に興味がある方は、ぜひ読ん でみてくださいませ! ▲先頭へ |
| 今夜は眠れない ★ 中央公論社 1992年2月20日発行 大阪市立福島図書館 |
「ある日突然、放浪の相場師と呼ばれた男から母に五億円が遺贈され、一家 はバラバラに。僕の生まれは...、男の意図は...。家族の絆を取り戻すた め、サッカー少年の僕は真相を探りに乗り出した....。」と帯に、書かれて おりました。 さても爽やかな長編です。こういう作品は、落ち込んでいるときに読むと、思い もかけず急に元気づけられたりするから、本というのは本当に不思議な力を持っ ていると、つくづく感じてしまいます。結末もすごくオシャレなので、なんか気持 ちのいい余韻をもって、ふとんの中にもぐりこめる作品なのでした。軽い本を読 みたいときに、ぜひどうぞ!! ▲先頭へ |
| 夢にも思わない 中央公論社 1995年5月7日発行 大阪市立中央図書館 |
上記の「今夜は眠れない」の続編です。主人公の緒方君が同級生のクドウさん に恋をしたために、虫聞きの会に行くことになり、そこで殺人事件の出くわしてし まいます。殺された女性はクドウさんの従姉で、彼女は少女売春組織のスタッフ だったのです。そして、彼女の恋人も殺されてしまうのですが....。 この作品も、親友の島崎君と興味深い田村警部が登場して、面白く話は展開し ていきます。無事に事件は解決するのですが、最後に後味の悪いかたちで終了 したのが残念でした。外見はかわいい女の子の中に、何かえたいの知れないエ ゴの塊のような不気味なものを垣間見たような気がして、憂鬱になってしまった のでした。 ▲先頭へ |
| 我らが隣人の犯罪 ★ 「オール読物」推理小説新人賞受賞作 文藝春秋 1990年1月30日発行 大阪市立福島図書館 |
帯には、「不思議な味のニュー・ミステリー五篇」と書かれておりました。 [目次] ●我らが隣人の犯罪−鳴き声のうるさい隣家の犬を何とかしようと一計を案じた 僕たちだったが、ことは意外な方向に発展して行き....。 ●この子誰の子−嵐の夜、一人で留守番をしていた少年の家に突然、子連れで 押しかけたその見知らぬ女は、驚くべきことを口にした。 ●サボテンの花−卒業研究にサボテンの超能力を取り上げるのだと何やら妙な ことを始めた六年一組の小学生たち。さて、その顛末は? ●祝・殺人−結婚式の披露宴に届いた一通の祝電を開いて何故か狼狽する司 会者。バラバラ死体殺人事件へと思いもかけぬ展開に。 ●気分は自殺志願−作家の海野周平に自分を殺してほしいと頼み込んで来た 男には奇想天外な動機があった。そこで周平は妙案を思いつく。 「サボテンの花」は、とても素敵な作品ですね。いつも大事に見守っていてくれた 教頭先生にお礼をプレゼントするために、少年たちはサボテンの研究をするので すが、そのプレゼントはなんとテキーラだったのですね。久しぶりに心暖まる作品 を読んだような気がしたのでした。 ▲先頭へ |
| 蒲生邸事件 ★★★ 毎日新聞社 1996年10月10日発行 大阪市立福島図書館 |
帯には、「永遠に消えることのない、過ぎ去った時の痕跡。二・二六事件で密室 と化した帝都。緊迫の4日間に起きる謎の殺人。この国はいちど滅びるのだ− 長文の遺書を残し、陸軍大将・蒲生憲之が自決を遂げたその日、時の扉は開か れた。雪の降りしきる帝都へ、軍靴の音が響く二・二六事件のただなかへ、ひそ かに降り立った時間旅行者。なぜ彼は<この場所>に現れたのか。歴史を変え ることはできるのか。戦争への道を転がり始めた運命の4日間を舞台に展開する 、極上の宮部ミステリー!」と書かれておりました。 東京の大学入試に落ちて、再び上京して予備校の入試を受けるため、都内の古 びたホテルに泊まった尾崎孝史は、ホテルで摩訶不思議な人物に出会います。 そして、夜半ホテル火災に遭遇して死にかけるのですが....。 とても興味深くて、そして哀しくて、切なくて、涙が出そうになってしまった作品 なのでした。最近の世の中の動きは、二・二六事件前後や昭和金融恐慌当時 と非常に酷似してきていて、いやな予感がしてしようがないのですが、こういう 小説の舞台設定ならいいですね。宮部みゆきさんは、「龍は眠る」のように、 超能力がお好きなんですね。私も昔、こういう題材が大好きでたまらなかった のを懐かしく思い出しました。この作品も、タイムトラベルが題材なのですが、 昭和十一年にタイムスリップするのが秀逸であり、ヒロインのふきさんがとても 可愛かったのが印象的でした。 ▲先頭へ |
| 地下街の雨 ★ 集英社文庫 1998年10月25日発行 大阪市立中央図書館 |
[目次] 地下街の雨 /決して見えない /不文律 /混線 /勝ち逃げ /ムクロバラ /さよなら、キリハラさん。 解説のところで、室井 滋さんが書いてくれているように、七つの短編から構成さ れていて、七通りの恐さとせつなさが楽しめる作品です。 「地下街の雨」は、フィアンセに裏切られてすっかり自閉し、身を隠すようにして ウェイトレスのアルバイトをする女性のお話です。「決して見えない」は、新興住 宅地のある駅前のタクシー乗り場で出会った男と死神のお話、「不文律」は、 一家心中のお話、「混線」は、いたずら電話をする男にとり憑いた電話の精霊 のお話、「勝ち逃げ」は、教頭をやっていた独身の叔母さんが亡くなり、彼女が 住んでいたマンションのポストに昔の手紙(これが駆け落ちの断りの内容)が 投函されているのを、主人公が見つけるのですが....。 「ムクロバラ」は、殺された覚醒剤中毒の男の名前で、「骸原」と書きます。彼を 正当防衛で殺してしまった男がノイローゼになり、主人公のデカ長のところへ 通っては、「魔がさしたとしか思えない殺人事件」の新聞記事を持って来るの ですが....。「さよなら、キリハラさん」は、主人公の道子が自宅で一切の音 が聞こえなくなり、家の外に出ると、聞こえるという異常な体験をし、その後、 家族全員、自宅である時間になると、耳が聞こえなくなってしまいます。それか ら、突然キリハラさんが現れるのですが....。 ちょっと毛色の変わった作品ばかりですが、それなりに楽しめたのでした。 ▲先頭へ |
| 堪忍箱 新人物往来社 1996年10月30日発行 大阪市立福島図書館 |
帯には、「宮部みゆきワールド第5弾! 蓋を開けたら災いが降りかかるという 堪忍箱とは・・・・江戸の怪異をとおして、人間の哀しさと弱さ、それ故にひたむ きに生きる人々を活写する話題の秀作集!」と書かれておりました。 「堪忍箱・かどわかし・敵持ち・十六夜髑髏・お墓の下まで・謀りごと・てんびん ばかり・砂村新田」の8作の短編から構成されています。 全体的に、暗くて哀しいお話が多いのですが、「砂村新田」は、ラストシーンが とても素敵な作品でした。「敵持ち」は、長屋に住む板前が殺されそうになり、 同じ長屋に住む浪人に用心棒になってもらうお話、「お墓の下まで」は、差配人 の市兵衛は三人の捨て子を引き取り、立派に育てあげるのですが、その子たち の母親が突然現れるお話です。どちらもなかなか面白い作品に仕上がっていて 、江戸深川の人情話もいいものだと感じたのでした。 ▲先頭へ |
| 幻色江戸ごよみ ★★ 新人物往来社 1994年7月20日発行 大阪市立福島図書館 |
帯には、「宮部みゆきワールド第4弾! 怪異・怨霊、そして人の情! 江戸の片 隅で、貧しくも精いっぱい生きた人々の喜びと悲しみを、四季折々の風物とともに 綴る珠玉の12篇。時代小説の新しい世界を開示した待望の作品集!」と書かれ ておりました。 [目次] 第一話 鬼子母火 /第二話 紅の玉 /第三話 春花秋燈 /第四話 器量のぞみ/第五話 庄助の夜着 /第六話 まひごのしるべ /第七話 だる ま猫 /第八話 小袖の手/第九話 首吊り御本尊 /第十話 神無月 / 第十一話 侘助の花 /第十二話 紙吹雪。 「鬼子母火」は、流行病で死んだ母の髪を注連縄に隠したために起こった火事のお 話、「紅の玉」は、奢侈禁止令を破って、銀のかんざしを作ってしまった職人のお話、 「春花秋燈」は、ある古道具屋に流れてきたいわくつきの二つの行灯のお話、「器 量のぞみ」は、大女で醜女と言われてきたお信さんが望まれて嫁いだ先は、美男・ 美女揃いの一家だったが、おくめという幽霊がいたというお話、「庄助の夜着」は、 庄助が古着屋で買ってきた夜着には若い女の幽霊が憑いていたというお話です。 「まひるのしるべ」は、火事で三年も前に亡くなった者の名を書いた迷子札を首から さげている子供のお話、「だるま猫」は、だるま猫っていう猫頭巾を被ると、火事場 が見えるというお話、「小袖の手」は、古着屋から買ってきた女ものの小袖の袖口 から、白い手がすうっと出てきたお話、「首吊り御本尊」は、奉公人の神様だと自 称する土蔵の首くくり男の幽霊のお話、「神無月」は、毎年、神無月にだけ一回 押し込みをする男のお話、「侘助の花」は、看板屋の要助が好きである侘助の花 <別名を唐椿といい、椿に似た赤や淡い紅色、白色の花を咲かせる樹木>が主 人公です。「紙吹雪」は、無理心中の生き残りの少女が母を追い詰めて殺した高 利貸しに復讐するお話です。 12からなる短編で構成されているのですが、いい作品が揃っています。とくに、 「器量のぞみ」、「首吊り御本尊」、「紙吹雪」が印象に残ったのでした。 ▲先頭へ |
| ステップファザー・ステップ ★ 講談社 1993年3月25日発行 大阪市立福島図書館 |
[目次] ステップファザー・ステップ /トラベル・トラベラー / ワンナイト・スタンド/ヘルター・スケルター / ロンリー・ハート /ハンド・クーラー /ミルキー・ウエイ。 七つの短編から成る連作小説です。主人公は泥棒で、脇をかためているのが、 13歳の双子の兄弟と、柳瀬の親父(廃業した弁護士で、情報屋であると同時に 元締め)さんたちなのです。この泥棒さんが、ローカルな新興住宅地で、深夜、 屋根から入ろうとした時に、雷が間近に落ちたため、屋根から落ちて意識不明に なってしまいます。そして、看病したのが、隣に住んでいる双子だったのです。 彼らの両親は二人とも駆け落ちしていて不在なんですね。そして、彼は二人の 継父(stepfather)になってしまいます。このメンバーで、難事件を解決しながら、 ちゃっかりお金も頂戴していくのですが....。 倉敷を真似た暮志木の小原美術館で起こった名画すり替え事件、授業参観・ 父母会入れ替わり事件など、面白い作品が続いていて、寝っころがりながら、 楽しく読んでいたのでした。 ▲先頭へ |
| 12.ぼんくら ★★ 講談社 2000年4月20日発行 大阪市立福島図書館 |
[目次] 殺し屋 /博打うち /通い番頭 /ひさぐ女 /拝む男 /長い影 /幽霊。 帯には、「直木賞受賞第一作! 長屋からひとりずつ人が消えていく。店子を襲 った殺し屋、差配人の出奔、謎の新興宗教騒ぎ。江戸下町の長屋で連続する事 件の裏の陰謀に、同心・井筒平四郎と超美形少年・弓之助が挑む。」と書かれて おりました。 読み始めてみると、軽い連作短編集かなと思っていたのですが、違うのですね! 「長い影」から中編になっていて、急に面白くなってきて、完全に宮部ワールドに 引き込まれてしまったのでした。さて、お話は、江戸下町・本所深川にある鉄瓶 長屋を舞台にして始まります。最初、主人公は煮売屋のお徳さんかなあと思った のですが、本当は臨時町廻り同心の井筒平四郎なのでした。題名は彼がぼんく らに見えるところからきているようなのですが、なかなかどうして名同心だったの だと感じたのですが....。 この作品も強烈な個性を持つ登場人物がめじろ押しでありまして、圧倒されてし まったのですが、私の大好きな回向院の茂七親分の右腕の政次郎さんも特別出 演してくれているのには、さすがに驚いてしまったのでした。 読んでいて、宮部みゆきさんの時代小説の大ファンだということを改めて認識した すばらしい作品でした。 ▲先頭へ |
| 13.あやし〜怪〜 ★★ 角川書店 2000年7月30日発行 大阪市立図書館共有 |
紹介文に、「人間は本当はやさしくそして強いものなのです・・・・。居眠り心中、影 牢、女の首、灰神楽、蜆塚、梅の雨降る、など江戸にまつわる怪談の数々を描い た江戸ふしぎ噺の傑作。宮部みゆき初めての江戸ホラー短編集。」と書かれてお りました。 [目次] 居眠り心中、影牢、布団部屋、梅の雨降る、安達家の鬼、女の首、時雨 鬼、灰神楽、蜆塚。 [あらすじ] 「居眠り心中」は、木綿問屋・大黒屋に奉公している銀次が見た悪夢 のお話、「影牢」は、蝋問屋・岡田屋で起こった七人もの死人を出した忌まわしい 事件のお話、「布団部屋」は、代々の主人が短命であり、奉公人への躾がきつい という評判のある酒屋・兼子屋で、若い女中がひとり頓死するという事件が起こっ たのですが....。 「梅の雨降る」は、おみくじで大凶を引いてしまったおえんが、梅の木の枝に結び つけながら、『この凶運を、あたしの代わりに、お千代ちゃんにおっつけてください』 とお願いしてしまうお話、「安達家の鬼」は、筆と墨を商う笹屋に嫁いだ主人公が、 義母から鬼の話をうち明けられるのですが....。 「女の首」は、孤児となった十歳の太郎が袋物の葵屋に奉公するお話、「時雨鬼」 は、加納屋で奉公人暮らしを続けているお信が、口入屋の主人に相談しに行くお 話、「灰神楽」は、平良屋という下駄屋の女中・おこまが、火鉢にとりつく幽霊に憑 かれてしまうお話、「蜆塚」は、口入屋の米介が、亡父の友人・松兵衛から『同じ 顔をした同じ人間が十年くらいの間をおいて、まるっきり違う名前で、まるっきり違 う経歴でやってくることがある』という摩訶不思議な話を聞かされるのですが...。 とても怖いお話が九編も揃っているんですね。「女の首」では、『カボチャの神様』が 出てくるのですが、著者さんらしい心温まるストーリー展開でありまして、感動して しまいました。また、鬼がいっぱい登場してくれています、悪い鬼も、良い鬼も。 鬼に興味がある方はぜひ一読してみてくださいませ! ▲先頭へ |
| 14.模倣犯<上・下> ★★ 小学館 2001年4月20日発行 大阪市立福島図書館 |
紹介文に、「公園のゴミ箱から発見された女性の右腕。それは『人間狩り』という 快楽に憑かれた犯人からの宣戦布告だった。炎上しながら谷底へ落ちていく一台 の車。事故死した男の自宅には、数々の『殺人記録』が。事件を操る真犯人の正 体は・・・!? あまりにも切ない結末! 魂を抉る驚愕と感動の三千五百五十一 枚。直木賞受賞作『理由』以来三年ぶりの現代ミステリー。」と書かれておりまし た。 仕事も顧みず、一気に読ませてもらったすごい作品でありまして、読み終わってか らも色々と考えさせられました。いつもの宮部ワールドの爽やかな読後感があまり 感じられず、心に重しのようなものが深く沈殿してしまったのが少し残念でした。 これは、「貴方も、これからの人生や生き方について真剣に考えないといけないで すよ。」という著者さんからのメッセージなのでしょうか? 被害者の家族、加害者の家族の悲しみ、虚しさがあまりにもダイレクトに伝わって きてしまって、少し鬱になってしまいました。でも、一家惨殺の中で生き残った塚田 真一や孫娘を失った有馬義男たちの苦難に敢然と立ち向かう姿勢に救われた作 品でもありました。義男が真犯人に言い放った言葉、「嘘は必ずばれる。本当のこ とっていうのはな、あんたがどんなに遠くまで捨てにいっても、必ずちゃんと帰り道 を見つけて、あんたのところに帰ってくるものなんだよ。」が、二十一世紀の生き方 を指し示しているように感じたのですが....。 ▲先頭へ |